1998年10月13日
(社)トロン協会 ITRON専門委員会

「JTRON2.0仕様」公開のお知らせ

(社)トロン協会 ITRON専門委員会は、ITRON仕様のリアルタイムOS上にJava 実行環境を実装する際の標準インタフェース仕様である「JTRON2.0仕様」を公 開します。

JTRON2.0仕様は、組込みシステムの分野で業界標準となっているITRON仕様 OSの上にJava実行環境を実装し、両者の利点を活用してアプリケーションシス テムを構築することを可能にするためのインタフェースを規定するものです。 主にITRON仕様OS上での使用を想定していますが、大部分は他のリアルタイム OSにも適用可能です。

仕様化の背景と概要

最近、組込みシステムの分野においても、Javaの技術が注目を浴びていま す。Java実行環境は、ネットワークからダウンロードしたプログラムを安全に 動作させることができる、グラフィックスを用いたユーザインタフェースを容 易に構築することができる、といった利点がある一方で、バイトコード処理系 のオーバヘッドやガベージコレクションの必要性から、リアルタイム処理には 向かないとされています。そこで、ITRON仕様OS上にJava実行環境を実装し、 アプリケーションシステムを、Java に向いた部分はJavaプログラム、ITRON仕 様OSに向いた部分はITRONタスクの形で構築することで、両者の利点を活用す るアプローチが有力と考えられています。

ここで必要になるのが、JavaプログラムとITRONタスクが通信するためのイ ンタフェースの標準化です。この標準化なしでは、Javaの特長であるプログラ ムの互換性を保つことができなくなります。今回公開するJTRON2.0仕様は、こ のインタフェース仕様の標準を定めたものです。具体的には、Javaプログラム からITRON仕様OSの資源をアクセスするためのインタフェース(タイプ1)、 JavaプログラムとITRONタスクで、Javaのオブジェクトを共有するためのイン タフェース(タイプ2)、JavaプログラムとITRONタスクがストリームで通信す るインタフェース(タイプ3)の3種類の通信インタフェース仕様が標準化され ています。この内タイプ1のインタフェースは、1997年12月に公開された最初 のJTRON仕様(JTRON1.0仕様)で定められているもので、今回公開する JTRON2.0仕様の仕様書には含まれていません。

JTRON2.0仕様は、他のITRON仕様と同様にオープンな仕様であり、誰でも自 由にライセンス料なしで利用することができます。仕様書の全文は以下のURL からダウンロードできます(現時点では日本語版のみ。英語版の仕様書は数ヶ 月内に公開予定)。

http://www.itron.gr.jp/SPEC/jtron2-j.html

JTRON2.0仕様の特長

JTRON2.0仕様の特長をまとめると、次の通りとなります。

関係者のコメント

ITRON専門委員会 委員長の田丸喜一郎は、「JTRON2.0仕様により、ITRON仕 様OSとJava実行環境の両者の長所を同時に活かすための枠組が用意できたと考 えています。これにより、ITRON仕様とJava技術の両者の普及・発展が促進さ れることを期待しています。また、JTRON2.0仕様は国際的にも先進的な取組み であると自負しており、ITRON専門委員会では、JTRON2.0仕様をベースに国際 的な標準化がなされるよう積極的に活動していきたいと考えています。」と述 べています。

昨年12月に公開されたJTRON1.0仕様に準拠したOS製品である「JBlend」を開発・販売し、Java技術の組 込みシステムへの応用に多くの実績を持つ(株)アプリックス 社長の郡山龍氏は、 「弊社では、JTRON2.0仕様実装のための開発を終えており、μITRON4.0仕様OS の出荷に合わせた発売を予定しています。JTRON仕様OSのリーディングカンパ ニーとしてJTRON2.0仕様に準拠した製品をいち早く市場に投入することで、常 に市場の活性化を促す存在でありたいと考えています。」と述べています。

また、ITRON仕様OSとJava実行環境を組み合わせたソフトを搭載したFA端末 「NetJacs」 を製品化しているNECにおいて、ソフト開発の責任部門であるNEC ソフトウェ アデザイン研究所 所長の門田浩氏は、「JTRON2.0仕様により、今までアドホッ クにやらざるをなかったITRONアプリケーションとJavaアプリケーションの統 合方式が標準化され、組込みシステムにおけるJavaプログラムの再利用性が高 まり、よりJavaの組込み適用がより広まることを大いに期待しています。」と 述べています。

今後の予定と普及活動

ITRON専門委員会では、現在検討を進めている次世代のμITRONリアルタイ ムカーネル仕様(μITRON4.0仕様)がフィックスした時点で、JTRON2.0仕様を それに整合するよう微調整することを予定しています。併せて、今回の仕様書 に含まれていないタイプ1のインタフェース仕様を、μITRON4.0仕様に合致す るよう修正したものを盛り込む予定です。

また、ITRON専門委員会では、明日(10月14日)東京で開催する「ITRON仕様セミナー」において、 JTRON2.0仕様の詳細な解説を予定しています。また、11月4日に米国カリフォ ルニア州サンノゼで開催予定の「ITRON International Meeting」において仕 様の概要紹介を行うなど、国内外の組み込みシステム分野の展示会やセミナー 等において、JTRON2.0仕様の普及・広報活動を行っていく予定です。

お問い合わせ先

本発表に関するお問い合わせは、以下いずれか宛にお願いします。

(社)トロン協会 ITRON専門委員会
 事務局 担当: 竹内 透
 TEL: 03-3454-3191
 FAX: 03-3454-3224
 Email: torutake@sepia.ocn.ne.jp

ITRON専門委員会 幹事
 高田 広章(豊橋技術科学大学 情報工学系)
 TEL: 0532-44-6752
 FAX: 0532-44-6781
 Email: hiro@ertl.ics.tut.ac.jp

以上

ITRONとは?

ITRONは、組込みシステムのためのリアルタイムOS仕様と、それに関連する 仕様の標準化を行うプロジェクトです。小規模な組込みシステム用に設計され たμITRONリアルタイムカーネル仕様は、極めて多くの組込み機器に採用され ており、この分野における業界標準となっています。ITRONプロジェクトは、 トロンプロジェクトの1つのサブプロジェクトとして、(社)トロン協会のITRON 専門委員会が中心となって推進しています。ITRONプロジェクトに関する詳細 は、以下のITRONホームページをご参照くださ い。

http://www.itron.gr.jp/


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