組込システムのための
ソフトウェア部品標準化への取り組み

(社)トロン協会 ITRON専門委員会
1996年9月

近年の組み込みシステムの大規模化・複合化の流れの中で、アプリケーション ソフトウェアの開発ベースを引き上げる必要性から、組み込みシステムのため のソフトウェア部品 (ないしは、ミドルウェア) の重要性が広く認識されてき ました。また、マイクロプロセッサの高性能化により、従来ハードウェアで実 現していた機能をソフトウェアで代替する傾向も、ソフトウェア部品の重要性 を増す要因となっています。

ソフトウェア部品が広く使われるようになると、その標準化が重要な課題となっ てきます。(社)トロン協会 ITRON専門委員会では、従来カーネル仕様の標準化 に注力してきたわけですが、このような背景から、一歩進めてソフトウェア部 品のインタフェースの標準化への取り組みを開始することになりました。とこ ろが、組み込みシステムのためのソフトウェア部品には多種多様なものがあり、 そのすべての標準化を新たに行うことは困難です。また、既存のインタフェー スで十分に対応できる分野も多く、標準化への取り組みは、ニーズの高い分野 に対して優先的に行うべきであると考えています。

そこで、組込システムのためのソフトウェア部品標準化に向けての最初のステッ プとして、ソフトウェア部品インタフェースに関する情報収集と、可能なもの についてはデファクトスタンダード化を促すことを目的として、組込システム のためのソフトウェア部品サーベイ(仮称) を開始します。具体的には、すで にソフトウェア部品を構築・提供しているメーカから、そのインタフェースを 他のメーカがフリーで使ってよいことを条件にソフトウェア部品のインタフェ ース仕様の提案を募集し、提案のあったものをインターネット上などで公開し ます。

次のステップとしては、その中から標準化ニーズの高い分野を抽出し、ソフト ウェア部品インタフェースの標準化作業に着手します。

ソフトウェア部品に関わるもう1つの活動として、ITRON専門委員会では、ミ ドルウェアの提供に適したカーネル機能、特にハードリアルタイム性を持った ミドルウェアをサポートするカーネル機能についての検討を開始します。従来 ハードウェアで実現していた機能を代替するソフトウェア部品の場合、ハード ウェアで実現されていた場合と同様のリアルタイム性を求められる場合が多く あります。また、音声や動画像を扱うソフトウェア部品の場合にも、リアルタ イム性が求められるのが通常です。このような状況で、ソフトウェア部品のリ アルタイム制約を満たしつつユーザアプリケーションと共存させ、また複数の ソフトウェア部品の併用を可能にするためには、カーネルにそれを支援する機 能が求められることになります。こういった要求に対して、現状のμITRON仕 様で十分か、新たな機能が必要か、既存の機能のサポートレベルの見直しは必 要かを明らかにすることが、検討の目的となります。

具体的には、ハードリアルタイムサポートWG (仮称) を設置し、まずは今年度 下半期をメドに、ハードリアルタイムシステムに関する理論のサーベイを行う とともに、ハードリアルタイムサポートに対する要求の洗い出しと整理を行い ます。WG では、ハードリアルタイム性をサポートするカーネル機能であれば、 ソフトウェア部品のサポートにこだわらずに検討対象とします。また、ソフト ウェア部品をサポートする機能に関して、ハードリアルタイム性にこだわらず に検討します。WG の最初の会合を 10月末頃に開く予定で進めております。

これらの活動には、従来の ITRON専門委員会メンバ社に加えて、ソフトウェア 部品のメーカなどにも参加いただくことが望ましいと考えています。組込シス テムのためのソフトウェア部品の標準化活動およびソフトウェア部品提供に適 したカーネル機能の検討活動に興味のある方は、ITRON専門委員会までご連絡 くだされば幸いです。

連絡先:
  (社)トロン協会 ITRON専門委員会
  〒108 東京都港区三田1丁目3番39号 勝田ビル5階
  TEL: (03) 3454-3191
  FAX: (03) 3454-3224
  Email: itron-middleware@tron.um.u-tokyo.ac.jp


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