ITRON Newsletter No.20 (HTML Edition)
(社)トロン協会 ITRON専門委員会
〒108 東京都港区三田1丁目3番39号 勝田ビル5階
TEL: (03) 3454-3191 FAX: (03) 3454-3224
ITRONオープンセミナーご案内
今年も例年通り、ITRONオープンセミナーを、7月15日(月)に品川総合区民会館
「きゅりあん」(JR京浜東北線大井町駅南口徒歩1分) において開催致します。
このセミナーは、ITRON仕様に関する最新の成果や、ITRONの実装状況、開発環
境の状況などを紹介するために毎年1回開催しているもので、今回で 6回目の
開催になります。今回のセミナーは、「次のステップへの展望」というタイト
ルで、カーネルの標準化からその周辺の標準化へのステップを展望するものと
したいと思います。
- 日時: 7月15日(月) 10:00〜17:30
- 場所: 品川総合区民会館「きゅりあん」
- 定員: 90名
- 参加費: (消費税込)
- トロン協会会員: 2,000円
- 一般: 5,000円
- 学生: 2,000円
- プログラム(予定):
- 10:00〜10:20 ITRONの最新の状況
- 田丸 喜一郎 ((株)東芝)
- 10:20〜12:00 μITRONを用いたシステム開発手法 − マイクロマウスの事例
- 小林 康浩 (富士通(株)), 小島 史郎 (富士通デバイス(株))
- 13:00〜14:30 パネルセッション「ミドルウェア標準化へのアプローチ」
- 15:00〜16:30 ITRONの応用事例,開発環境,研究動向
- 「車両制御用リアルタイムOS仕様について」
佐藤 浩司 (トヨタ自動車(株))
- 「MULTI の ITRON対応」
福富 寛 ((株)アドバンスドデータコントロールズ)
- 「ITRON 上の TCP/IPモジュールと WWWブラウザ AVE-Front」
鎌田 富久 ((有)アクセス)
- 「C++言語用リアルタイムOS における優先度継承の実現」
東原 修 (NECマイコンテクノロジー)
- 16:30〜17:30 特別講演
- 坂村 健 (東京大学)
今回のセミナーでは、ITRON 初心者のためのセッションとして、「μITRONを
用いたシステム開発手法」を午前中に用意しました。ここでは、マイクロマウ
スの開発事例を例にとって、μITRON を用いたシステム開発手法についてわか
りやすく解説します。午後には、最近問題になっているミドルウェアの標準化
をテーマにしたパネルセッションの後、ITRON の最新の応用事例、ソフトウェ
ア開発環境の開発動向、ITRON に関する研究動向を紹介します。また、恒例と
なりました 坂村健氏による特別講演も予定しています。セミナー終了後
18:00頃からは、セミナー参加者のための懇親会を予定しております。
なお、参加申し込み方法については、ITRONホーム
ページ を参照するか、(社)トロン協会 ITRONオープンセミナー担当
(TEL: (03)3454-3191, FAX: (03)3454-3224) までお問い合わせ下さい。
今回も多数のご参加をお待ちしています。
ITRON関連製品登録制度改定のお知らせ
ITRON専門委員会では、ITRON仕様の普及と発展を促進するために、1991年度よ
りITRON関連製品登録制度を実施してきましたが、この度、制度の内容を一部
見直すことになりました。主な改定内容は次の通りです。
- ITRON仕様に準拠した製品のみを登録対象とし、名称を「ITRON仕様準拠製
品登録制度」と改めます。ここでいう「製品」とは、業務として販売またはサ
ポートされているものであるとします (外販しているかどうかは問いません)。
- μITRON3.0 準拠のカーネルには、μITRON3.0 互換性チェックシートに製
品仕様を記入したものの提出を義務付けます。提出のあったチェックシートは、
インターネット上で公開します。
- 従来の制度で登録された製品の内、新制度の登録対象となるものは、その
まま引き継ぎます。
なお、この登録制度は、いわゆる検定制度とは異なり、登録された製品が
ITRON仕様に合致していることを検証するためのものではありません。
新しい制度は 1996年10月1日から施行の予定です。新しい制度の申請書類を希
望される方は、(社)トロン協会 ITRON専門委員会までお申し込み下さい。
ITRON関連製品登録制度への登録状況
前号を発行して以降 1996年4月1日までに、新規に登録されたITRON仕様関連製
品は別表の通りです。全登録製品リストは、ここ
にあります。
ITRON仕様関連製品制度 新規登録製品一覧
(1996年2月1日〜1996年4月1日)
仕様 |
製品名 |
対象プロセッサ |
会社名 |
μITRON3.0 |
MR30 |
M16C/60シリーズ |
三菱電機セミコンダクタソフトウェア(株) |
ITRON関連書籍の一覧
1996年4月1日時点で、ITRON専門委員会が編集し、発行されているITRON関連の
書籍は別表の通りです。ITRON・μITRON標準ハンドブックは、μITRON (Ver
2.0) と ITRON2 の仕様書を1冊にまとめたものです。ご希望の方は、各発売元
にお問い合わせ下さい。
μITRON3.0仕様の最新バージョンは、Ver 3.02.00 です。μITRON3.0標準ハン
ドブック (Ver 3.00.00) からの改訂点は、ITRONニュースレター No.5 および No.11、
または ITRON標準ガイドブック2 に掲載されています。
ITRON標準ガイドブック2 は、μITRON3.0仕様をメインのターゲットとして作
成されています。ITRON標準ガイドブック'92-'93 は、タイトルの 1992〜93年
という期間を過ぎていますが、μITRON仕様(Ver 2.0) や ITRON2仕様を使われ
ている場合には、現在でも有効に活用できます。
ITRON関連書籍一覧
書籍名 |
分類 |
価格 |
発売元 |
発行年 |
ISBN番号 |
ITRON・μITRON標準ハンドブック |
和文仕様書 |
4,800円 |
パーソナルメディア |
1990 |
ISBN4-89362-079-7 |
μITRON3.0標準ハンドブック |
和文仕様書 |
4,000円 |
パーソナルメディア |
1993 |
ISBN4-89362-106-8 |
ITRON/FILE標準ハンドブック |
和文仕様書 |
3,000円 |
パーソナルメディア |
1992 |
ISBN4-89362-092-4 |
ITRON標準ガイドブック'92-'93 |
和文参考書 |
3,500円 |
パーソナルメディア |
1992 |
ISBN4-89362-197-6 |
ITRON標準ガイドブック2 |
和文参考書 |
3,500円 |
パーソナルメディア |
1994 |
ISBN4-89362-133-5 |
μITRON Specification Ver 2.01.00.00 |
英文仕様書 |
12,000円 |
トロン協会 |
1989 |
− |
ITRON2 Specification Ver 2.02.00.10 |
英文仕様書 |
15,000円 |
トロン協会 |
1990 |
− |
μITRON3.0 Specification Ver 3.02.00 |
英文仕様書 |
− |
トロン協会 |
1994 |
− |
※ 価格には消費税を含みません。
※ トロン協会発売の書籍には、トロン協会会員向け価格が設定されています。
※ 英文仕様書は、ここから取得できます。
新製品紹介
ここでは、ITRON関連製品登録制度に新規に登録された製品について、簡単な
紹介をします。
MR30 は、三菱製 16ビットマイコン M16C/60シリーズ用のリアルタイムOS で、
μITRONに準拠しています。
●特長
MR30は、以下に示す特長を持っています。
- マイコンのアーキテクチャを活用し、高速処理を実現しています。
- M16C/60シリーズ用 Cコンパイラ NC30 と一緒に使用することができます。
- MR30のカーネルは、ライブラリ形式で提供しています。システム生成時に
必要な機能のみをリンクすることでプログラムサイズがコンパクトになります。
●機能
MR30の機能を以下に示します。
- μITRON仕様V.3.0に準拠
μITRON仕様 V.3.0 は、ITRON2 とμITRON V.2.0 を統合し、接続機能を加え
た仕様です。MR30 は、μITRON仕様 V.3.0 の内、レベルR, S の全部とレベル
E の一部を提供し、従来のμITRON仕様 V.2.0 (7700ファミリ用リアルタイム
OS: MR7700等) との互換性を重視しています。
- 割り込み応答時間の高速化
MR30では、高速な割り込み応答時間を要求されるアプリケーションプログラム
に対応できるように、OSのシステムコールを発行しない割り込みに対して、高
速に応答できるよう設計しています。
- コンテキスト選択機能
使用するレジスタを各タスクごとに指定することでタスクに必要なスタックサ
イズを低減できます。使用するレジスタの指定はコンフィグレーションファイ
ルで行います。なお、この機能は、アプリケーションプログラムをアセンブリ
言語で記述したときのみ有効な機能です。C言語で記述した場合は、全てのレ
ジスタ選択しなければなりません。
- NC30対応
- カーネルダイレクトコール機能
- MR30のカーネルを C言語インターフェースライブラリを介さずに直接呼び
出すことができます。この機能により次のような効果があります。
- システムコールの高速化
- スタック容量の削減
- コードサイズの縮小
- タスク及び各種ハンドラの簡略化
- Cコンパイラ NC30 がタスクおよび各種ハンドラに対して、最適化処理を
行なうため、通常の関数として記述できます。
●概略仕様
MR30の概略仕様を以下に示します。
項目 |
仕様 |
ターゲットマイクロプロセッサ |
M16C/60シリーズ |
最大タスク数 |
255 |
タスクの優先度数 |
255 |
最大イベントフラグ数 |
255 |
イベントフラグの幅 |
16ビット |
最大セマフォ数 |
255 |
セマフォの形式 |
計数型 |
最大メールボックス数 |
255 |
メッセージサイズ |
16ビット |
メッセージ数 |
1〜3570個 (全メールボックスの合計) |
システムコール数 |
42 |
カーネルサイズ |
約1.0K〜3.9Kバイト |
最大割り込み禁止時間 |
2μS (OS独立割り込みの場合) |
タスク切り替え時間 |
25μS |
※ 測定条件は、バス幅16ビット、外部クロック周波数10MHz、メモリノーウェ
イトです。
文献紹介
1996年実時間処理に関するワークショップ (RTP'96) が、3月21, 22日の両日
に広島大学において開催されました。ITRON を扱った発表としては、武蔵工業
大学の鈴木基之氏らによる「教育用μITRON仕様リアルタイムOSシミュレータ
MITOS」というタイトルの発表がありました。紹介された OSシミュレータは、
タスク遷移、入出力などを画面にグラフィカルに表示し、プログラムの動作を
視覚的に確認できるようにしたものです。他に ITRON に関連した発表として、
東京大学の高田広章氏らによる「マルチプロセッサリアルタイムカーネルのス
ケーラビリティを重視した実装」とタイトルの発表では、マルチプロセッサ対
応に拡張するベースのリアルタイムカーネル仕様として、μITRON仕様が用い
られています。また、松下電器の前田利之氏らによる「AV通信のための実時間
システム記述言語」の中でも、言語のシミュレーション環境に ITRON を利用
しているという言及がありました。実時間処理に関するワークショップは、電
子情報通信学会のコンピュータシステム研究会の形で毎年開催されており、予
稿集は研究会報告の形で出版されています。
※ このニュースレターは、TRONWARE vol.39 および TRON PROJECT
JOURNAL No.44 に掲載されたものを、WWW で公開するために再編集したもので
す。
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