ITRON Newsletter No.31 (HTML Edition)

(社)トロン協会 ITRON専門委員会
〒108-0073 東京都港区三田1丁目3番39号 勝田ビル5階
TEL: (03) 3454-3191 FAX: (03) 3454-3224

ITRONニュースレター発行 5周年にあたって
トロンプロジェクトリーダ 坂村 健

ITRONサブプロジェクトはトロンプロジェクトの一番最初からのサブプロジェ クトであり、プロジェクト開始以来10年以上の歴史をもっている。ITRONの歴 史はトロンプロジェクトの歴史といっても過言ではない。

お蔭様でITRONは仕様の公開や検定、オープンセミナーの開催、ソースコー ドの公開、ニュースレターの発行など多くの関係者の非常に熱心な活動に支え られ、国内外の多くのメーカーに採用され、VTR、デジタルカメラ、エアコン、 通信機器、電子楽器、自動車関連機器などITRONを組み込んだ多くの応用製品 が市場に出回るようになった。今や、ITRONは機器組み込み用のリアルタイム オペレーティングシステムの実質的な世界スタンダードとなっている。また、 最近ではJavaなど他のオープンアーキテクチャとの融合も進め、これにも多大 な関心が集まっている。ITRON関係各位のこれまでの活動に感謝するとともに、 今後ともITRONの進展、普及に対して引き続きご支援、ご協力をお願い申し上 げる次第である。

ITRONニュースレター発行 5周年にあたって
ITRON専門委員長 田丸 喜一郎

1993年4月に第1号を発行した ITRONニュースレターも、この号で第31号と なり、6年目に入ります。この間、2ヵ月に1度のペースで欠かさずにニュース レターを発行することができたのは、ITRONプロジェクトをご支援くださる皆 様のおかげであり、ここに厚くお礼申し上げます。

さて、ITRONプロジェクトそのものを考えますと、1984年の TRONプロジェ クト開始と同時に開始して以来すでに 14年が経過しています。また、(社)ト ロン協会も今年で10周年を迎えました。この間、1987年に最初の ITRON仕様を 公開して以来、半導体技術の著しい進歩に対応するために、1989年と1993年の 2度にわたり ITRON仕様の改訂を行うとともに、その普及活動に尽力してきま した。その結果 ITRON仕様は、日本国内においては業界標準の地位を確かなも のとし、国際的な普及活動も少しずつ成果を上げてきたものと自負しておりま す。

しかしながら、1つのOS仕様を作り出し、それを世界的な標準とすることは、 多大な努力と極めて長い時間を要する仕事です。ITRON専門委員会では、世界 に向けて ITRON仕様の普及を図ると同時に、次々と出てくる新しい要求に常に 答えていくことを目指しています。昨年来、組み込みシステム技術の新たな流 れに対応すべく新たな標準化活動を行っていますが、今年は、μITRON4.0仕様 を始めとして、その成果を皆様にお届けできるものと思います。今後とも、 ITRONプロジェクトをご支援下さいますようお願いいたします。

ITRONニュースレターについて

ITRON専門委員会では、ITRONプロジェクトに関連する各種の情報や ITRON 専門委員会の活動状況を広くお知らせするために、2ヶ月に1回ニュースレター を発行しています。ITRON仕様の追加・訂正に関する情報や、ITRON専門委員会 が発行している書籍の訂正情報は、ITRONニュースレター上でお知らせしてい ます。また、ITRON仕様に関連する製品の紹介、書籍や文献の紹介、展示会や セミナー等のイベントのお知らせにも、ニュースレターを活用しています。

ITRONニュースレターは、TRONWARE誌 およびトロン協会の機関誌上に掲載されます。また、インターネット上でも、 WWW を通して読むことができます。ITRONニュースレターに記事の掲載を希望 される方は、ITRON専門委員会まで連絡下されば幸いです。また、ITRON仕様お よび ITRONサブプロジェクトに関する質問・コメント・要望等についても、 ITRON専門委員会宛にお送り下されば幸いです。

ITRON専門委員会メンバの紹介

1998年2月1日の時点でのITRON専門委員会メンバは別表の通りです。今後、 専門委員会メンバが増える度に、ITRONニュースレター上でお知らせする予定 です。

ITRON専門委員会メンバ 一覧
委員会社(あいうえお順)
沖電気工業(株)
(株)東芝
日本電気(株)
(株)日立製作所
富士通(株)
三菱電機(株)

大学・研究機関
東京大学 坂村研究室
豊橋技術科学大学 高田研究室
オブザーバ会社(あいうえお順)
(株)アクセス
(株)アプリックス
セイコーインスツルメンツ(株)
ソニー(株)
日本シグナスソリューションズ
メンター・グラフィッ クス・ジャパン(株)
メトロワークス(株)
ヤマハ(株)

事務局
(社)トロン協会

ITRONオープンセミナー開催のお知らせ

今年も例年通り、ITRONオープンセミナーを、7月15日(水)にアルカディア 市ヶ谷において開催致します。セミナーのプログラムは現在検討中ですが、現 在検討中のμITRON4.0仕様の概要紹介に加えて、パネルディスカッション、 ITRON関連製品や応用事例の紹介、TRONプロジェクトリーダである坂村健氏の 特別講演などを予定しています。プログラムの詳細や申込方法は次号でお知ら せする予定です。今年も多数のご参加をお待ちしています。

μITRON4.0仕様研究会(仮称) 発足のお知らせ

ITRON専門委員会では、1997年度、ITRONハードリアルタイムサポート研究 会、RTOS自動車応用技術委員会、Java Technology on ITRON-specification OS 技術委員会において、個別に次世代のμITRON仕様に対する要求事項を検討 してきましたが、各研究会/委員会からの要求事項がまとまってきたのを受け て、1998年4月から「μITRON4.0仕様研究会(仮称)」を発足させ、μITRON4.0 仕様(仮称) を完成させる作業を開始します。

具体的には、μITRON4.0仕様研究会は、「カーネル仕様WG」、「アプリケー ション設計ガイドラインWG」、「デバイスドライバ作成ガイドラインWG」の3 つの作業部会で構成します。カーネル仕様WG においては、上に挙げた各研究 会/委員会からの要求をまとめて、年内を目標にμITRON4.0仕様を書き上げる 作業を行います。他の2つの WG においては、それぞれの課題に関する検討作 業を進めるとともに、ガイドラインの作成を行います。

ITRON専門委員会では、研究会活動に積極的に貢献される意志のあるリアル タイムOS技術者や組み込みシステム技術者の方々の参加を歓迎します。具体的 な参加方法は、ITRONホームページ上でお知ら せする予定です。

JTRON仕様標準化の推進体制について

1997年12月に開催された TRONSHOW'97 において、ITRON仕様OS 上に Java 実行環境を動作させる場合のインタフェース仕様である JTRON仕様が公表さ れました。JTRON仕様は、東京大学 坂村研究室を中心に検討が進められてきた ものですが、今後は、Java Technology on ITRON-specification OS 技術委員 会においてその標準化作業を推進していく予定です。Java Technology on ITRON-specification OS 技術委員会においては 1997年度末をメドに標準化作 業を進めており、近い内に、現在の JTRON仕様(バージョン1) を包含した JTRON仕様バージョン2(仮称) を公表する予定です。

システムLSIソリューションフェア'98 における講演のお知らせ

4月14日(火)〜17日(金) に、東京流通センターにおいて開催されるシステムLSIソリュー ションフェア'98 (主催: (社)日本 電子工業振興協会。今年の Embedded System Solutions はこの名称で呼 ばれています) の併設コンファレンスにおいて、ITRONプロジェクトの最新状 況を紹介する講演を予定しています。現時点で詳細は未定ですが、詳細が決ま り次第、ITRONホームページなどでお知らせす る予定です。

ITRON仕様準拠製品登録制度への新規登録

前号を発行して以降 1998年2月1日までに、新規に登録されたITRON仕様準 拠製品は別表の通りです。これらの内、μITRON3.0仕様の製品については、製 品の仕様をμITRON3.0互換性チェックシートに記入したものをITRONホームページで公開しています。最新の全 登録製品リストは、ここにあります。

ITRON仕様準拠製品制度 新規登録製品一覧 (1997年12月1日〜1998年2月1日)
仕様 製品名 対象プロセッサ 会社名
μITRON3.0 HI7000 SH-1, SH-2シリーズ (株)日立製作所
HI7400 SH2-DSPシリーズ (株)日立製作所
HI7700 SH-3シリーズ (株)日立製作所
※ 日本国外ではサポートしていない製品も含む
※ 製品名は日本国内のみに適用

ITRON関連書籍の一覧

1998年2月1日時点で、ITRON専門委員会が編集し、発行されているITRON関 連の書籍は別表の通りです。ご希望の方は、各発売元にお問い合わせ下さい。

μITRON3.0標準ハンドブック 改訂新版には、μITRON3.0仕様の最新バージョ ン (Ver 3.02.02) が収められています。旧版のμITRON3.0標準ハンドブック (Ver 3.00.00) から Ver 3.02.00 への改訂点は、ITRON標準ガイドブック2 に 掲載されています。Ver 3.02.00 から Ver 3.02.02 へは、構成の変更や説明 の追加だけで、仕様の技術的な内容の変更はありません。

ITRON・μITRON標準ハンドブックは、μITRON Ver 2.0 と ITRON2 の仕様 書を1冊にまとめたものです。ITRON標準ガイドブック2 は、μITRON3.0仕様を メインのターゲットとして作成されています。ITRON標準ガイドブック'92-'93 は、タイトルの期間を過ぎていますが、μITRON仕様 Ver 2.0 や ITRON2仕様 を使われている場合には、現在でも有効に活用できます。

ITRON関連書籍一覧
書籍名 分類 価格 発行元 発行年 ISBN番号
ITRON・μITRON標準ハンドブック 和文仕様書 4,800円 パーソナルメディア 1990 ISBN4-89362-079-7
μITRON3.0標準ハンドブック 改訂新版 和文仕様書 4,000円 パーソナルメディア 1997 ISBN4-89362-154-8
ITRON標準ガイドブック'92-'93 和文参考書 3,500円 パーソナルメディア 1992 ISBN4-89362-197-6
ITRON標準ガイドブック2 和文参考書 3,500円 パーソナルメディア 1994 ISBN4-89362-133-5
μITRON Specification Ver 2.01.00.00 英文仕様書 12,000円 トロン協会 1989
ITRON2 Specification Ver 2.02.00.10 英文仕様書 15,000円 トロン協会 1990
μITRON3.0 Specification Ver 3.02.00 英文仕様書 トロン協会 1994
μITRON3.0: An Open and Portable Real-Time Operating System for Embedded Systems 英文仕様書 $40.00 IEEE CS Press 1997 ISBN0-8186-7795-3
※ 価格には消費税を含みません。
※ トロン協会会員に対しては、会員価格が設定されています。
※ 英文仕様書は、ここから公開しています。

100% Pure Java Day における講演の報告

2月4日(水)と5日(木) の両日に、ホテルニューオータニ幕張で開催された 100% Pure Java Day (主催: 日本サン・マイクロシステムズ(株)) において、 JTRON仕様の概要と Java Technology on ITRON-specification OS技術委員会 の活動状況、JTRON仕様の実装例と適用例について紹介する講演を行いました。

講演は、2月5日(木) の 13時30分〜15時のスケジュールで、最初に、ITRON 専門委員長/(株)東芝の田丸喜一郎氏より、ITRONプロジェクトの現状と、 JTRON仕様(バージョン1) の概要、Java Technology on ITRON-specification OS技術委員会での今後の取り組みについて紹介を行いました。続いて、JTRON 仕様を製品化している (株)アプリックスの吉田明廣氏より、JTRON仕様を実装 した OS である Aplix JBlend の概要と、その適用例として (株)PFU と (株) アプリックスの共同開発による IrDA 超小型携帯端末 BlueMountain (開発コー ド) の紹介がありました。300名の会場は満席で、また質問も数件出て、活発 な議論が行われました。

新製品紹介

ここでは、ITRON仕様準拠製品登録制度に新規に登録された製品について、 簡単な紹介をします。

HI7000, HI7400, HI7700
(株)日立製作所

HI7000, HI7400, HI7700は、日立オリジナルの 32ビット RISCプロセッサ SuperH (TM) RISC engineファミリ用のμITRON3.0仕様準拠のリアルタイムOS です。

【対象マイコン】

HI7000 : SH-1, SH-2 CPUコア
HI7400 : SH-DSP CPUコア
HI7700 : SH-3 CPUコア

【製品構成】

【特長】

  1. μITRON3.0仕様に準拠

    μITRON3.0仕様のレベルS すべてとレベルE の一部をサポートしています。 オブジェクトの動的生成もサポートしています。

  2. 日立独自機能

    ID番号の自動割当、タイムスライス機能、MMU を利用したページプール機 能 (HI 7700 のみ) など、μITRON仕様外の機能もサポートしています。

  3. 高性能

    タスク切替え時間 7マイクロ秒と、高速です。

    測定条件:
    HI7400の wup_tsk システムコールで相手タスクに切り替わるまでの時間
    SH7410 60MHz動作、内蔵メモリ使用時

  4. マルチタスクデバッガ

    弊社インサーキットエミュレータ用のマルチタスクデバッガを用意してい ます。マルチタスクデバッガは、OS資源の参照、システムコールの発行、シス テムコール履歴の表示など機能をサポートしています。

  5. サードパーティとの連携

    デバッガ、通信・FILEドライバ、Java、カスタムサポートなど、サードパー ティと連携した体制を充実させています。

【問い合わせ先】

株式会社日立製作所半導体事業部マイコン製品技術部
〒100 東京都千代田区大手町二丁目6番2号 (日本ビル)
TEL: 03-5201-5022 (ダイヤルイン)
FAX: 03-5200-5561
URL:
http://www.hitachi.co.jp/Sicd/Japanese/Products/micom/dev_env/index.htm

関連製品紹介

ここでは、ITRON に関連する開発ツールやミドルウェアについて、簡単な 紹介をします。

ITRON関連商品のご紹介
(株)アドバンスド・データ・コントロールズ 福富 寛

1. はじめに

当社 (株式会社アドバンスド・データ・コントロールズ) は、主に、米国 Green Hills Software社の組み込み用プログラム開発環境を提供しております。 この中には、プログラムビルダ、コンパイラ (C、C++、Embedded C++) アセン ブラ、リンカ、デバッガおよび各種ユーティリティが含まれており、ポピュラー な32/16ビット組み込み用RISCのほとんどすべてがターゲットCPUとしてサポー トされています。

デバッグ環境としては、ホスト上での命令セットシミュレータ、ターゲッ トボード上でのモニタ、および各種ICEがサポートされています。

最近こうしたRISCを使ったターゲット環境ではRTOSの使用が一般化してお りますが、特にコマーシャルベースのRTOSがポピュラーになりつつあります。 その中でも、日本国内においては、μITRON仕様OSの人気が高いようです。そ のため当社も日本独自の取り組みとして、μITRON仕様OSのサポートを開始し ました。

2. コンパイラでの対応

当社の販売しているコンパイラの内、μITRON仕様OSのアプリケーション開 発に使用できるものはCコンパイラだけですが、対象としてはNEC製のV800シリー ズおよびVrシリーズ用のμITRON仕様OS、東芝製のTX39シリーズ用のμITRON仕 様OS、日立製のSHシリーズ用のμITRON仕様OS、富士通製のSparcliteシリーズ およびFRシリーズ用のμITRON仕様OSをカバーしております。C++ (あるいは Embedded C++) につきましても、対応の準備をすすめております。

3. デバッガでの対応

当社は言語ツール提供者という立場にありますので、μITRON仕様OS対応の デバッガには大きな特徴があります。

一般的にRTOS対応デバッガと呼ばれるものでは、カーネル内部状態の表示 やタスク遷移状態の表示が重要視されているようです。しかし、それだけでは タスク単体の (論理的な) デバッグには不十分です。RTOS環境でもそうでない 環境でも、一般的なソースレベルデバッグが同様にサポートされるべきと考え、 当社のRTOS対応デバッグ環境ではタスク単位に1つづつソースウィンドウを開 き、そこで通常のデバッグ (go、step、メモリ参照など) を可能にしておりま す。

もちろん、μITRON仕様OSに対応したデバッグ環境でも、タスク単位のウィ ンドウがサポートされています。タスク単位のデバッグですので、たとえば、 ソースレベルのシングルステップ実行によりそのタスクがWAIT状態になっても ソース表示が他の部分に変ることはありません。再度そのタスクがRUN状態に なったとき、シングルステップ実行が終了したことになり、対応するソースが 表示されます。

こうしたタスク単位のデバッグに加え、各種オブジェクトのダンプ、ホス トからのシステムコール発行、システムコールと割り込みのトレースなどもサ ポートされています。

基本的にコンパイラで対応しているμITRON仕様OSに対して、このようなデ バッグ環境が用意されております。ただし、実行環境として特定のICEを必要 とする場合もあります。提供可能な組み合わせにつきましては、 sales@adac.co.jpまでお問い合わせください。


※ このニュースレターは、TRONWARE vol.50 および TRON PROJECT JOURNAL No.50 に掲載されたものを、WWW で公開するために再編集したもので す。

- Back to the list of ITRON Newsletter (Japanese Version)
- Back to ITRON Home Page (in Japanese)