(社)トロン協会 ITRON部会
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1999年5月に、(社)トロン協会の組織替えが行われ、その結果、これまでの ITRON専門委員会 (ITRON Technical Committee) が、ITRON部会 (ITRON Committee) に名称変更されることになりました。ITRON部会の役割や運営方法 は、これまでのITRON専門委員会と変更ありません。これに伴って、ITRONニュー スレターの発行者は、この号からITRON部会となります。
ITRON部会では、1998年4月にμITRON4.0仕様研究会を発足させ、その中の カーネル仕様検討WGにおいて、次世代のμITRONリアルタイムカーネル仕様の 標準化作業を進めてきましたが、この度、その標準化作業が完了し、 μITRON4.0仕様 (Ver. 4.00.00) として公開することとなりました。
ITRON部会では、1996年頃より、標準化の範囲を組込みシステム向けのリア ルタイムカーネル仕様から周辺仕様を含めた標準化、とりわけソフトウェア部 品のための標準化へと広げて活動を進めてきました。ソフトウェア部品のため の標準化活動の成果としてこれまでに、ITRON TCP/IP API仕様とJTRON2.0仕様 を、それぞれ1998年5月と10月に公開しています。また、特定の応用分野にお ける要求事項を探る活動として、1997年度にはRTOS自動車応用技術委員会の活 動を行いました。
そのような活動の中で、リアルタイムカーネル仕様を今一度見直す必要性 を認識し、μITRON4.0仕様を策定することとなりました。μITRON4.0仕様は、 ITRONリアルタイムカーネル仕様としては第4世代に位置付けられるもので、そ の策定の動機は次の4点に整理できます。
これらの中でソフトウェアの移植性の向上については、近年の組込みソフ トウェアの大規模化・複雑化により、アプリケーションソフトウェアを異なる μITRON仕様カーネルへ容易に移植できることが、従来よりも強く求めらるよ うになってきたという背景があります。また、ソフトウェア部品の流通を促す ためにも、ソフトウェアの移植性の向上は極めて重要な課題となっています。 このような要求に対して、ITRON仕様の基本的な設計方針である「弱い標準化」 では答えられない場面が出てきました。一方、「弱い標準化」の方針によって、 μITRON仕様の広範なスケーラビリティや、実行時オーバーヘッド・使用メモ リの削減が実現されており、μITRON仕様の普及に重要な役割を果たしてきた と考えられます。
そこでμITRON4.0仕様では、仕様全体としては「弱い標準化」の方針を維 持しつつ、ソフトウェアの移植性を向上させるために、標準的な機能セットと その仕様を厳格に定めるというアプローチを採用しています。この標準的な機 能セットを「スタンダードプロファイル」と呼びます。標準的な機能セットを 定めるにあたっては、μITRON仕様カーネルの応用分野としては大きめのシス テムを想定しました。これは、ソフトウェアの移植性は一般に、システムの規 模が大きいほど重視されるためです。さらにμITRON4.0仕様では、それよりも 小規模なシステムを想定したプロファイル規定として「自動車制御用プロファ イル」も規定しています。このプロファイルは、RTOS自動車応用技術委員会で 取りまとめられた要求事項に基づいて策定されたものです。
μITRON4.0仕様では、プロファイル規定を設けたこと以外にも、従来の ITRON仕様になかった数々の新機能の導入や、仕様の厳密化・実装依存性の削 減を行っており、これまでのμITRON仕様よりもさらに完成度の高いものとなっ ています。仕様の詳細については、仕様書を参照くださると幸いです。また ITRON部会主催のセミナー、組込みシステム分野の展示会や雑誌などの場で、 μITRON4.0仕様を積極的に紹介していく予定です。
μITRON4.0の仕様書は、従来のように一般書籍としては出版せず、ITRONプロジェクトホームページからダウンロー ドできるものとしました。また、仕様書の全文ないしは一部分を複写・再配布 してもよいものとしています (ただし、仕様書の一部分を複製・再配布する場 合には、μITRON4.0仕様書からの抜粋である旨、抜粋した箇所、μITRON4.0仕 様書の全文を入手する方法を明示しなければなりません。また、仕様書を無断 で改変することは堅く禁じます)。
μITRON4.0仕様書は、厳密性を重視して記述されているために、従来の μITRON仕様書に比べて、リアルタイムOSの初心者には読みにくい面がありま す。この問題点をカバーするために、ITRON部会では、μITRON4.0仕様をより わかり易く説明するための解説書 (標準ガイドブック) を編集・発行すること を計画しています。
μITRON4.0仕様に関するご意見・ご質問・ご要望などありましたら、ITRON 部会までお知らせいただけると幸いです。
ITRON部会では、昨年と同様、Embedded Systems Conference (ESC) の開催にあわせて、米国カリフォルニア州 San Jose において ITRON International Meeting の開催を計画しています。ITRON International Meeting は、主に米国においてITRONプロジェクトに興味を持 つ方を対象として、ITRON仕様やプロジェクトの最新の状況をお知らせするた めのものです。
具体的には、ESCの会期中の9月29日(水)に、ESCが開かれる San Jose Convention Center の近くのホテルにおいて開催する予定です。ミーティング の内容については現在ITRON部会で検討中で、詳しいことはITRONプロジェクト ホームページでお知らせする予定です。ESCに参加を計画されている方は、 ITRON International Meeting への出席も予定して頂けると幸いです。
またITRON部会では、例年同様ESCの展示会においても、ITRONプロジェクト に関する広報活動を行うことも予定しています。
1999年5月から、東芝情報システム(株)とパーソナルメディア(株)がITRON 部会のオブザーバメンバに加わりました。なお、ITRON部会の最新のメンバリ ストは、ここにあります。
東芝情報システム(株) は、創立以来培った技術でコア・コンピタンス (強 みの発揮) 経営を推進、S,S&S (Sevice, Software & System) の事業を展開し ています。アドバンスシステム本部では、保有技術の専門性を高めるため、 SIES (SI for Embedded System) 事業部、マイコンシステム事業部、オープン システム事業部の3事業体制でソフトウェアを中心とした事業を展開していま す。RTOS、ドライバ、ミドルウェア、ボードからマイコンアプリケーション開 発、応用システムまでを開発しています。特に組み込みシステムの SIES事業 部は、情報家電への期待の高まる Java、RTOS やミドルウェアのライセンス、 リファレンス開発ボード、最新IP (Intellectual Property) 開発の品揃えに 取り組んでいます。
当社はビジネス用のパッケージソフトウェアの開発・販売を行う会社とし て発足しましたが、その流れから、近年はBTRONサブプロジェクトに力を入れ ており、BTRON仕様OS「B-right/V」などの製品を一般市販しております。 ITRONについては、SPARC向けの「I-right/S」、DOS/V PC向けのJTRON仕様OS 「J-right/V」を開発・販売しているほか、「B-right/V」の中心核としても ITRON仕様OSを利用しております。また、当社の出版部門では、「μITRON3.0 標準ハンドブック 改訂新版」「ITRON標準ガイドブック2」といったITRON関係 の仕様書や参考書、隔月刊の技術情報誌「TRONWARE」などを発行しており、OS の開発および出版活動を通じて、トロンプロジェクトとは深いお付き合いをさ せていただいております。
ITRON仕様のCPUコード (μITRON3.0仕様ではget_verシステムコールのリター ンパラメータ cpu として参照できる。μITRON4.0仕様では廃止) を、次の通 り追加割当ていたしましたので、お知らせします。
B'10100000 (H'a0) ザイログ Z80 (および互換プロセッサ)
また、個人または個人事業者が開発したカーネルのために、以下のメーカー コード (μITRON3.0仕様ではget_verシステムコールのリターンパラメータ maker として、μITRON4.0仕様ではカーネル構成マクロ TKERNEL_MAKER と ref_verサービスコールのリターンパラメータ maker として参照できる) を割 り当て、さらに各個人には、カーネルの識別番号 (μITRON3.0仕様では get_verシステムコールのリターンパラメータ id として、μITRON4.0仕様で はカーネル構成マクロ TKERNEL_PRID とref_verサービスコールのリターンパ ラメータ prid として参照できる) の上位8ビットに用いる値を割り当てるこ ととしました。
0x0008 個人 (または個人事業主)
上記以外のCPUコードの割当ては、μITRON3.0標準ハンドブック 改訂新版 の4.2節およびITRONニュースレター No.37に、メーカーコードの割当てについては、μITRON4.0仕様書の5.4節 に掲載されています。
ITRON部会では、ITRON仕様準拠製品登録制度へ登録された製品に関連して、 必要な場合にはCPUコードならびにメーカーコードの追加割当てを行っていま す。追加割当てに関しては、ITRON部会までご相談ください。
前号を発行して以降、1999年6月1日までに、新規に登録されたITRON仕様準 拠製品は別表の通りです。最新の全登録製品リストは、ここにあります。
仕様 | 製品名 | 対象プロセッサ | 会社名 |
---|---|---|---|
μITRON3.0 | 組み込み制御用カーネル Kernel | Z80 | 川上 昌之 |
書籍名 | 分類 | 価格 | 発行元 | 発行年 | ISBN番号 |
---|---|---|---|---|---|
ITRON・μITRON標準ハンドブック | 和文仕様書 | 発行元品切れ | パーソナルメディア | 1990 | ISBN4-89362-079-7 |
μITRON3.0標準ハンドブック 改訂新版 | 和文仕様書 | 4,000円 | パーソナルメディア | 1997 | ISBN4-89362-154-8 |
ITRON標準ガイドブック'92-'93 | 和文参考書 | 3,500円 | パーソナルメディア | 1992 | ISBN4-89362-197-6 |
ITRON標準ガイドブック2 | 和文参考書 | 3,500円 | パーソナルメディア | 1994 | ISBN4-89362-133-5 |
ITRON TCP/IP API仕様 (Ver. 1.00.01) | 和文仕様書 | − | トロン協会 | 1998 | − |
JTRON2.0仕様 (Ver. 2.00.00) | 和文仕様書 | − | トロン協会 | 1998 | − |
μITRON Specification Ver 2.01.00.00 | 英文仕様書 | 12,000円 | トロン協会 | 1989 | − |
ITRON2 Specification Ver 2.02.00.10 | 英文仕様書 | 15,000円 | トロン協会 | 1990 | − |
μITRON3.0 Specification Ver 3.02.00 | 英文仕様書 | − | トロン協会 | 1994 | − |
μITRON3.0: An Open and Portable Real-Time Operating System for Embedded Systems | 英文仕様書 | $40.00 | IEEE CS Press | 1997 | ISBN0-8186-7795-3 |
5月12日(水)〜14日(金)に、東京ビッグサイトにおいて開催された Embedded System
Solutions (ESS) '99 システムLSIソリューションフェア (主催: 日本電子工業振興協会) の併設コンファ
レンスにおいて、ITRON部会 主査/(株)東芝の田丸喜一郎氏によって「ITRON
プロジェクトの最近動向」というタイトルの講演が行われました。講演は、13
日(木)の11:45〜13:15に行われ、約100名の出席を頂きました。講演では、
ITRONプロジェクトの現状についての紹介の後、ITRONプロジェクトの最近の活
動状況とその成果についての紹介がありました。 また、トロン協会では、ESS'99の展示会にブースを出展し、主にITRON仕様
について紹介する展示を行いました。恒例になったITRONのスタンドについて
は、別表の12社のブースに置いて頂くことができました。ご協力頂いた方に、
この場を借りてお礼申し上げます。ESS'99 Conferenceでの講演の報告
(株)エーアイコーポレーション エルグ(株) (株)グレープシステム 三洋電機(株) ソフトウェアディベロップメントシステムズ(株) (株)東芝 |
NEC (株)日立製作所 ビットラン(株) 富士通(株) 三菱電機(株) 横河ディジタルコンピュータ(株) |
5月16日(日)〜21日(金)に、東京ベイヒルトンホテルにおいて開催されたOMG (Object Management Group; CORBA の標準化 団体) のミーティングで、ITRONプロジェクトについて紹介する講演が行 われました。講演は、Real-Time PSIG (Platform Special Interest Group) のチュートリアルの形で、17日(月)の17:00〜19:00に行われました。講演では、 最初にITRON部会 幹事/豊橋技術科学大学の高田広章氏からITRONプロジェク トの概要と最近の活動について紹介した後、ITRON部会/NECの中本幸一氏から JavaとCORBAを用いたコンポーネントベースのシステム設計に向けての提案が ありました。
ここでは、ITRON仕様準拠製品登録制度に新規に登録された製品について、 簡単な紹介をします。
〒919-0101 福井県南条郡今庄町湯尾126-8-1
川上 昌之
E-mail : kawa@ma.interbroad.or.jp
ここでは、ITRONに関連する開発ツールやミドルウェアについて、簡単な紹 介をします。
ZIPC では、部品化を Finite State Machine (FSM) モデルとして設計レベ ルで行います。この FSM モデルを表で表記することで、モレ・抜けのない設 計を行なうことができます。しかし、表では概要が掴みにくい欠点があります。 そこで ZIPC Ver.6.0 ではこの FSM モデルを図で表記した後、表に自動的に コンバートすることを可能にしています。
「繰り返し型スパイラルフロー」ではプロトタイピングが重要な技術要素 です。Microsoft社製 Visual Basic による仮想ターゲット環境下で、RTOS の 動作を含め EHSTM 化された FSM モデルの試験・検証を行うことが可能となり ます。
ZIPC はデバッガとコミュニケーションをとることで、多くのデバイスを支 援します。従来、コード・レベルで行っていたターゲットのデバッグを、さら に抽象度の高い EHSTM レベルでデバッグすることが可能です。日本電気社製、 富士通社製、松下電子工業社製、横河ディジタルコンピュータ社製、ビットラ ン社製のデバッガと連携動作します。
NEC製デバイス、富士通製デバイスを使用する場合、以下のようなデバイス に特化した機能を使用することがきます。
ZIPC Ver.6.0 は、7 つの基本ユニットと 2 つのオプション・ユニットか ら構成されます。
Windows 95, 98, NT 4.0
キャッツ株式会社 営業部
〒222-0033 横浜市港北区新横浜2-7-19 天幸ビル50-4F
TEL: 045-473-2816
FAX: 045-473-2673
Web Site: http://www.zipc.com/
日経エレクトロニクス誌 (日経BP社) の5月3日号より、NETs連 載講座のコーナーで、「リアルタイムOSを徹底活用するための鉄則」という連 載が掲載されており、その中でμITRON仕様が題材に取り上げられています。 連載の著者は、宮崎久則氏 (宮崎システム設計事務所) です。
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