ITRON Newsletter No.26 (HTML Edition)

(社)トロン協会 ITRON専門委員会
〒108 東京都港区三田1丁目3番39号 勝田ビル5階
TEL: (03) 3454-3191 FAX: (03) 3454-3224

ITRONオープンセミナーご案内

今年も例年通り、ITRONオープンセミナーを、7月16日(水)にアルカディア市ヶ 谷 (東京都千代田区) において開催致します。このセミナーは、ITRON仕様に 関する最新の成果や、ITRON仕様OS の実装状況・応用状況、開発環境の状況な どを紹介するために毎年 1回開催しているもので、今回で 7回目の開催になり ます。今回のセミナーは、「広がる応用と新たな標準化へのチャレンジ」とい うタイトルで、μITRON仕様OS の応用分野の広がりと、それに対応するための 新たな標準化課題への取り組みについて紹介します。

日時: 7月16日(水) 10:00〜17:30
場所: アルカディア市ヶ谷 (東京都千代田区; JR市ヶ谷駅 徒歩2分)
定員: 160名
参加費(消費税込):
トロン協会会員: 6,000円
一般: 8,000円
学生: 6,000円
プログラム(予定):
10:00〜10:30 ITRON の最新動向
田丸 喜一郎 ((株)東芝)
10:30〜12:00 ITRON のハードリアルタイムサポートへ向けて
高田 広章 (東京大学)
13:00〜15:00 パネルセッション「カーエレクトロニクスへの応用と 標準化」
(パネラ未定)
15:15〜16:45 ITRON の応用事例など
  • 「宇宙機へのITRON応用事例 (仮題)」
    檜原 弘樹 (日本電気(株) 無線事業本部 宇宙開発事業部 搭載機器開発部)
  • 「MR30を使用したFM文字多重ラジオ制御事例」
    木下 美穂 (三菱電機セミコンダクタソフトウエア(株) マイコン応用技術部 応用技術第二課)
  • "The Value of Open Standards for Embedded Software"
    Thomas Barton (Cygnus Support, Director of Marketing)
  • 他1件を予定
16:45〜17:30 特別講演
坂村 健 (東京大学)
今回のセミナーでは、午前のセッションで、昨年の11月に活動を開始した ITRONハードリアルタイムサポート研究会 の成果の中間報告を行います。午後には、μITRON仕様OS の新しい応用分 野の 1つとしてカーエレクトロニクスをテーマにパネルセッションを行い、現 在の応用状況と問題点、今後の方向性、標準化に対する要求と動向などについ て議論する予定です。また、ITRON の応用事例などのセッションでは、μ ITRON仕様OS の具体的な応用事例についての紹介をお願いしています。最後に、 恒例となりました 坂村健氏による特別講演も予定しています。

昨年のセミナーでは、参加申込者が会場の定員を超え、定員に達した後にお申 し込み頂いた方に対しては、残念ながら参加をお断りしました。今回は、昨年 よりも広い会場で開催してすべての希望者に参加頂けるように配慮するととも に、内容的にもより有益なセミナーとなるよう企画しました。

なお、最終的なプログラムおよび 参加申し込み方法については、ITRONホームペー ジを参照するか、(社)トロン協会 ITRONオープンセミナー担当 (TEL: (03) 3454-3191, FAX: (03) 3454-3224) までお問い合わせ下さい。今回も多 数のご参加をお待ちしています。

ITRON の利用動向に関するアンケート調査結果について

トロン協会では、昨年の11月から今年の1月にかけて ITRON の利用動向に関す るアンケート調査を実施しましたが、この度その調査結果がまとまりました。 調査結果は、調査にご協力頂いた 方に希望された方法で送付するとともに、ITRONホー ムページからも公開します。

トロン協会では例年、トロンの技術動向・利用動向に関するアンケート調査を 実施してきましたが、今年度はテーマを ITRON に絞り、組み込みシステムの 開発技術者を主な調査対象としてアンケート調査を行いました。 ITRONニュー スレター No.23 でもご協力をお願いしまし たが、アンケート調査票を郵送や展示会で配付したのに加えて、インターネッ トを利用しての調査も行いました。その結果、組み込み機器の設計・開発技術 者を中心に、国内で 287名の方からの回答を頂くことができました。調査にご 協力頂きました皆様に、この場をお借りしてお礼申し上げます。

アンケート回答者には、最近開発した最大3つの組み込み機器について、アプ リケーション分野や使用OS などを回答して頂きましたが、その結果、OS を用 いていない組み込み機器が約29%、ITRON仕様OS を用いている機器が約26% (内、 市販の ITRON仕様OS が約16%、自社用の ITRON仕様OS が約10%)、自社用の独 自仕様OS を用いている機器が約21%、ITRON仕様以外の市販OS を利用している 機器が約25% という結果になりました。昨年までのアンケートと設問を変更し たために、昨年の結果と比較することはできませんが、ITRON仕様OS が広く使 われている現状を確認することができました。

その他、組み込みシステム用リアルタイムOS の問題点や、ITRON仕様OS の利 点・欠点、ITRON に関連する活動の周知度や今後の活動に対する意見など、 ITRON 仕様に関する広報や、プロジェクトの今後の方針決定に有益な結果を得 ることができました。調査結果の詳細 については、ITRONホームページを参照下 されば幸いです。

1997年度の標準化活動計画について

ITRON専門委員会では、1997年度、次のような標準化活動を進めることを計画 しています。

まず、昨年11月に開始した ITRONハードリアルタ イムサポート研究会は、今年度も引き続き活動を続けます。活動形態をワー キンググループ主体に改め、年内をメドに研究会の成果のとりまとめを行う予 定です。

次に、ITRONニュースレター上でも何度かお知らせしました通り、ITRON専門委 員会では昨年来、組み込みシステムのためのソフトウェア部品インタフェース の標準化を重要な課題と考えて検討しています。その中で標準化ニーズの高い 分野として、TCP/IPプロトコル処理パッケージがあります。現在、TCP/IP の API (アプリケーションプログラムインタフェース) としては、ソケットイン タフェースが広く使われていますが、小規模な組み込みシステム用にはオーバ ヘッドが大きく適当でないという指摘がなされています。このような背景から、 ITRON専門委員会で、ITRON仕様OS 上での利用するための TCP/IP API の標準 化を行う活動を呼びかけた結果、Embedded TCP/IP 技術委員会が発足すること になりました。

また、応用分野をカーエレクトロニクスに絞って、μITRON仕様OS の応用技術 の調査・研究ならびに標準化活動を行う活動として、ITRON自動車応用技術委 員会(仮称)の発足を呼びかけることになりました。6月をメドに、活動を開始 する予定で準備作業を進めています。これに関連して、今年度、トロン協会 調査研究委員会では、リアルタイムOS の自動車・交通システムへの応用に関 する調査研究活動を行うことになっています。この活動の中では、自動車・交 通システム分野におけるリアルタイムOS の利用状況、技術動向や国際的な標 準化動向について調査を行い、標準化に対する要求を整理する予定です。

以上の他にも、μITRON仕様カーネルの C++言語バインディングの標準化や、 デバッガインタフェースの標準化などが必要性の高い活動テーマとして候補に 挙がっており、活動プランがまとまり次第、標準化活動を開始したいと考えて います。

ITRON専門委員会では、プロジェクトの次の展開へ向けて、多くの活動を進め て、実績を上げていきたいと考えています。これらの活動に興味をお持ちの方 は、ITRON専門委員会までお問い合わせ下されば幸いです。

ITRON仕様準拠製品登録制度への新規登録

前号を発行して以降 1997年4月1日までに、新規に登録されたITRON仕様準拠製 品は別表の通りです。全登録製品リストは、ここ にあります。

ITRON仕様準拠製品制度 新規登録製品一覧 (1997年2月1日〜1997年4月1日)
仕様 製品名 対象プロセッサ 会社名
μITRON2.0 NORTi/SH SH-1, SH-2 (有)宮崎システム設計事務所
NORTi/H85 H8/500 (有)宮崎システム設計事務所
NORTi/68K 68000, 68010, CPU32 (有)宮崎システム設計事務所
※ 日本国外ではサポートしていない製品も含む
※ 製品名は日本国内のみに適用

ITRON関連書籍の一覧

1997年4月1日時点で、ITRON専門委員会が編集し、発行されているITRON関連の 書籍は別表の通りです。ITRON・μITRON標準ハンドブックは、μITRON (Ver 2.0) と ITRON2 の仕様書を1冊にまとめたものです。ご希望の方は、各発売元 にお問い合わせ下さい。

μITRON3.0仕様の最新バージョンは、Ver 3.02.00 です。μITRON3.0標準ハン ドブック (Ver 3.00.00) からの改訂点は、ITRONニュースレター No.5 および No.11、 または ITRON標準ガイドブック2 に掲載されています。

ITRON標準ガイドブック2 は、μITRON3.0仕様をメインのターゲットとして作 成されています。ITRON標準ガイドブック'92-'93 は、タイトルの 1992〜93年 という期間を過ぎていますが、μITRON仕様(Ver 2.0) や ITRON2仕様を使われ ている場合には、現在でも有効に活用できます。

ITRON関連書籍一覧
書籍名 分類 価格 発売元 発行年 ISBN番号
ITRON・μITRON標準ハンドブック 和文仕様書 4,800円 パーソナルメディア 1990 ISBN4-89362-079-7
μITRON3.0標準ハンドブック 和文仕様書 4,000円 パーソナルメディア 1993 ISBN4-89362-106-8
ITRON/FILE標準ハンドブック 和文仕様書 3,000円 パーソナルメディア 1992 ISBN4-89362-092-4
ITRON標準ガイドブック'92-'93 和文参考書 3,500円 パーソナルメディア 1992 ISBN4-89362-197-6
ITRON標準ガイドブック2 和文参考書 3,500円 パーソナルメディア 1994 ISBN4-89362-133-5
μITRON Specification Ver 2.01.00.00 英文仕様書 12,000円 トロン協会 1989
ITRON2 Specification Ver 2.02.00.10 英文仕様書 15,000円 トロン協会 1990
μITRON3.0 Specification Ver 3.02.00 英文仕様書 トロン協会 1994
※ 価格には消費税を含みません。
※ トロン協会会員に対しては、会員価格が設定されています。
※ 英文仕様書は、ここから取得できます。

CPUコードの割り当てについて

ITRON仕様OS の get_ver システムコールで返す CPUコードを、次の通り追加 割当いたしましたので、お知らせします。この他の CPUコードの割当は、 μITRON3.0標準ハンドブックの 7.1節に掲載されています。

B'01100101(H'65) インテル Pentium
B'01100110(H'66)インテル Pentium Pro
B'10000000(H'80)IBM PowerPC601
B'10000001(H'81)IBM PowerPC602
B'10000010(H'82)IBM PowerPC603
B'10000011(H'83)IBM PowerPC604
B'10000110(H'86)IBM PowerPC401
B'10000111(H'87)IBM PowerPC403
CPUコードが未割当の CPU用に ITRON仕様OS を開発された場合で、CPUコード が必要となる場合には、ITRON専門委員会までご相談下さい。

新製品紹介

ここでは、ITRON仕様準拠製品登録制度に新規に登録された製品について、簡 単な紹介をします。

μITRON2.0仕様準拠リアルタイムOS NORTi/68K, NORTi/H85, NORTi/SH
MiSPO (有)宮崎システム設計事務所

【概要】

●NORTi/68K

対応MPU 68000, 68020, CPU32
付属ドライバ TMP68301, MC68032, MC68340,
MC68334 のタイマ/シリアル
コンパイラ Diab Data D-CC/68K
Microtec Research MCC68K
●NORTi/H85

対応MPU H8/500
付属ドライバ H8/532, H8/534 のタイマ/シリアル
コンパイラ IAR ICC H8/500
日立 H8/500シリーズCコンパイラ
●NORTi/SH

対応MPU SH-1, SH-2, (SH-3 予定)
付属ドライバ SH7032, SH7604 のタイマ/シリアル
コンパイラ 京都マイクロコンピュータ exeGCC
日立 SHシリーズCコンパイラ
Green Hills CクロスSHコンパイラ
68K, H8/500, SH 共にレベル割り込み機能を持ち、リアルタイム用途には適し ているプロセッサと言えます。

NORTi もレベル割り込み (割り込みハンドラのネスト) をサポートし、さらに カーネル処理時間や割り込みマスク時間を短縮するなど、リアルタイム用途に 最適なOS に仕上がっています。NORTi の場合、カーネルが最優先ではありま せんから、カーネルより上位レベルの OS機能を使わない割り込みルーチンは、 即座に応答するすることができます。

【特長】

他の NORTiシリーズ同様、組み込みが非常に簡単、カーネル全ソースコード付 属、同一パッケージで複数コンパイラに対応、低導入費用、組み込みライセン スフリーという特長を備えています。

●NORTi/68K

組み込み用 RISC 全盛の感がありますが、CISC である 68K が一番プログ ラムしやすいプロセッサであることは、昔も今も変わらないと思います。事実 NORTiでは、まず 68K で開発を行ってアルゴリズムを検証し、それから他のプ ロセッサへ移植しています。これを RISC から始めてしまうと、アセンブラが 面倒で大変です。

特に、68000 上位互換である CPU32 コアのプロセッサはコストパフォーマン スに優れ、弊社でも積極的なサポートを行って行く予定です。

●NORTi/H85

プロセッサ間の移植も容易な NORTiの特長を生かし、NORTi シリーズのラ インアップに追加しました。

現在はミニマムモデルまでの対応となっています。

●NORTi/SH

NORTi では外付け RAM を前提としてサイズよりも速度の最適化を計って います。結果として、外付けメモリでの同一条件ならば、内蔵RAM だけでも動 作できるよう最適化された OS よりも高速に動作します。

NORTi/SH から、インサーキットエミュレータでの対応が始まりました。現在 は、コンピューテックス ROM ICE 64 とソフィアシステムズ MultiSTAC のリ アルタイムOS デバッグ機能が NORTi をサポートしています。


※ このニュースレターは、TRONWARE vol.45 および TRON PROJECT JOURNAL No.47 に掲載されたものを、WWW で公開するために再編集したもので す。

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