ITRON Newsletter No.51 最終号 (HTML Edition)

(社)トロン協会 ITRON部会
〒108-0073 東京都港区三田1丁目3番39号 勝田ビル5階
TEL: (03) 3454-3191 FAX: (03) 3454-3224

目次

トロン協会内の部会再編とITRONニュースレターについて
μITRON4.0仕様の改訂
ITRON仕様準拠製品登録制度への新規登録
ITRON関連書籍の一覧
登録製品紹介
RX850
RX850Pro
RX4000
mKernel
文献紹介

トロン協会内の部会再編とITRONニュースレターについて

トロン協会では、2001年度から協会内の部会の編成を大幅に変更することになりました。具体的には、従来のITRON部会、BTRON部会などをすべて廃止し、新たに「トロン先進技術研究グループ」「次世代リアルタイム基盤グループ」「多文字OS応用グループ」の3つのグループを設置しました。また、次世代リアルタイム基盤グループの下には5つのWGが設置されます。

これまでITRON部会が担当してきた役割の中で、μITRON4.0仕様を含むITRON仕様書の保守・バージョンアップといった技術的な検討は、今後は、次世代リアルタイム基盤グループの下に設置されるバージョンアップWGが担当することになります。また、普及・広報活動については、上記の3つのグループとは別に設置されるマーケティンググループが統括することになります。

バージョンアップWGでは、今年度、μITRON仕様へのメモリ保護機能の導入に関する仕様検討 (ITRONニュースレター No.49 参照) に重点を置いて活動を進めていく予定です。また、必要に応じて、これまでに作成したITRON仕様のバージョンアップにも取り組む予定です。今後とも、ITRON仕様を発展させる活動に対して、ご支援・ご協力いただけると幸いです。

なお、この部会再編に伴い、トロン協会の活動の広報体制についても整理することとなり、ITRONニュースレターはこの号をもって最終号とさせていただきます。長い間おつきあいくださった皆様に感謝します。

なお、ITRONニュースレターのバックナンバーは、ITRONプロジェクトホームページで読むことができます。

μITRON4.0仕様の改訂

ITRON部会では、1999年6月に公開したμITRONリアルタイムカーネル仕様の最新版であるμITRON4.0仕様の保守作業を行っていますが、この度、これまでに発見された問題点や誤り等を修正した改訂版を作成・公開することになりました。

この度公開する改訂版は、μITRON4.0仕様 (Ver. 4.01.00) で、これまで同様、全文をPDF形式でITRONプロジェクトホームページからダウンロードすることができます。また、印刷・製本したものを、トロン協会から販売します。

改訂の内容は、細部の不都合の修正や誤りの修正、曖昧な文言の修正がほとんどで、仕様の大きい修正は含まれていません。ITRONプロジェクトホームページからは、旧版 (Ver. 4.00.00) との違いを記述したファイルもダウンロードすることができます。仕様に大きい修正がないことから、改訂版についても、これまで通り「μITRON4.0仕様」と呼ぶこととしました。

ITRON仕様準拠製品登録制度への新規登録

前号を発行して以降、2001年6月1日までに、新規に登録されたITRON仕様準拠製品は別表の通りです。最新の全登録製品リストは、ITRONプロジェクトホームページにあります。

ITRON仕様準拠製品登録制度 新規登録製品一覧 (2000年12月1日〜2001年6月1日)
仕様 製品名 対象プロセッサ 会社名
μITRON3.0 RX850 V850ファミリ 日本電気(株)
RX850Pro V850ファミリ
RX4000 VR (VR4100, VR4300, VR5432)
μITRON4.0 mKernel Z80 川上昌之
※ ITRON仕様準拠製品登録制度は、登録製品がITRON仕様に合致していること や、登録製品の品質を保証するものではありません。
※ 日本国外ではサポートしていない製品も含む。
※ 製品名は日本国内のみに適用。

ITRON関連書籍の一覧

2001年6月1日時点で、ITRON部会が編集し、発行されているITRON関連の書籍は別表の通りです。ご希望の方は、各発売元にお問い合わせください。

μITRON3.0標準ハンドブック 改訂新版には、μITRON3.0仕様の最新バージョン (Ver 3.02.02) が収められています。旧版のμITRON3.0標準ハンドブック(Ver 3.00.00) から Ver 3.02.00 への改訂点は、ITRON標準ガイドブック2 に掲載されています。Ver 3.02.00 から Ver 3.02.02 へは、構成の変更や説明の追加だけで、仕様の技術的な内容の変更はありません。

ITRON・μITRON標準ハンドブックは、μITRON Ver 2.0 と ITRON2 の仕様書を1冊にまとめたものです。発行元で品切れとなったため、発行元のホームページで公開されています。

ITRON標準ガイドブック'92-'93はμITRON仕様 Ver 2.0 と ITRON2仕様を、ITRON標準ガイドブック2 はμITRON3.0仕様をメインのターゲットとして作成されています。前者はタイトルに過去の年号が含まれていますが、μITRON仕様 Ver 2.0 や ITRON2仕様を使われている場合には、現在でも有効に活用できます。

ITRON関連書籍一覧
書籍名 分類 価格 発行元 発行年 ISBN番号
ITRON・μITRON標準ハンドブック 和文仕様書 発行元品切れ パーソナルメディア 1990 ISBN4-89362-079-7
μITRON3.0標準ハンドブック 改訂新版 和文仕様書 4,000円 パーソナルメディア 1997 ISBN4-89362-154-8
μITRON4.0仕様 (Ver. 4.01.00) 和文仕様書 5,000円 (税込み) トロン協会 2001
μITRON4.0検定仕様書(案) 和文仕様書 トロン協会 2001
ITRONデバッギングインタフェース仕様 (Ver. 1.00.00) 和文仕様書 3,000円 (税込み) トロン協会 2001
ITRON TCP/IP API仕様 (Ver. 1.00.01) 和文仕様書 トロン協会 1998
JTRON2.1仕様 (Ver. 2.01.00) 和文仕様書 トロン協会 2000
ITRON標準ガイドブック'92-'93 和文参考書 3,500円 パーソナルメディア 1992 ISBN4-89362-197-6
ITRON標準ガイドブック2 和文参考書 3,500円 パーソナルメディア 1994 ISBN4-89362-133-5
μITRON Specification Ver 2.01.00.00 英文仕様書 12,000円 トロン協会 1989
ITRON2 Specification Ver 2.02.00.10 英文仕様書 15,000円 トロン協会 1990
μITRON3.0 Specification Ver 3.02.00 英文仕様書 トロン協会 1994
μITRON3.0: An Open and Portable Real-Time Operating System for Embedded Systems 英文仕様書 $40.00 IEEE CS Press 1997 ISBN0-8186-7795-3
JTRON2.0 Specification (Ver. 2.00.00) 英文仕様書 トロン協会 1999
※ 税込みと表示されているものを除いて、価格には消費税を含みません。
※ トロン協会会員に対しては、会員価格が設定されています。
※ トロン協会発行の仕様書は、ITRONプロジェクトホームページで公開してい ます。

登録製品紹介

ここでは、ITRON仕様準拠製品登録制度に新規に登録された製品について、簡単な紹介をします。

RX850
日本電気(株)

【概要】

V850ファミリ・リアルタイムOS RX850は32ビットマイクロコンピュータV850ファミリ用の製品です。RX850では、Cコンパイラで使用するレジスタの本数を指定するコンパイル時オプション指定に対応したオブジェクトを提供していますので、用途に応じて組込むオブジェクトを選択することができます。

【特長】

  1. μITRON3仕様に準拠
  2. ROM化を意識したコンパクトな設計

    組込み用途に使用されるため、最大カーネルサイズを約7Kバイトに抑えています。また、RX850をユーザ・アプリケーションとリンクする際にはお客様の使用されるシステムコールだけを組込みますので、最適なコードサイズになります。

  3. パワー・セーブ機能をサポート

    実行タスクが存在しない場合、RX850はパワー・セーブ機能を使用します。RX850では、パワー・セーブ・モードをユーザがHALT, IDLE, STOPの中から選択できます。

  4. システム構築用ツールの提供

    ユーザがシステム構築を容易にできるように、RX850の参照するテーブルを生成するツール(コンフィギュレータ)を提供します。また、コンフィギュレータでは、使用するメモリ容量を算出しますので、メモリ容量の見積もりが簡単にできます。

  5. タスク・ディバグ環境の提供

    タスク・ディバッガとシステム・パフォーマンス・アナライザを提供しています。タスク・ディバッガは、RX850の管理する資源の状態表示ができます。また、システム・パフォーマンス・アナライザは、タスクの実行遷移をグラフィカルに表示します。

【お問い合わせ先】

E-mail: s-info@saed.tmg.nec.co.jp
URL: http://www.ic.nec.co.jp/micro/

RX850Pro
日本電気(株)

【概要】

V850ファミリ・リアルタイムOS RX850Proは32ビットマイクロコンピュータV850ファミリ用の製品です。RX850Proは、RX850に比べると、動的なタスク生成などが可能になっています。また、カーネルや管理テーブルのメモリ配置の制限もなくなり、全メモリ領域に配置可能になっています。

【特長】

  1. μITRON3仕様に準拠
  2. ROM化を意識したコンパクトな設計

    組込み用途に使用されるため、最大カーネルサイズを約13Kバイトに抑えています。また、RX850Proをユーザ・アプリケーションとリンクする際にはお客様の使用されるシステムコールだけを組込みますので、最適なコードサイズになります。

  3. パワー・セーブ機能をサポート

    実行タスクが存在しない場合、RX850Proはパワー・セーブ機能を使用します。RX850Proでは、パワー・セーブ・モードをユーザがHALT, IDLE, STOPの中から選択できます。

  4. システム構築用ツールの提供

    ユーザがシステム構築を容易にできるように、RX850Proの参照するテーブルを生成するツール(コンフィギュレータ)を提供します。また、コンフィギュレータでは、使用するメモリ容量を算出しますので、メモリ容量の見積もりが簡単にできます。

  5. タスク・ディバグ環境の提供

    タスク・ディバッガとシステム・パフォーマンス・アナライザを提供しています。タスク・ディバッガは、RX850Proの管理する資源の状態表示ができます。また、システム・パフォーマンス・アナライザは、タスクの実行遷移をグラフィカルに表示します。

【お問い合わせ先】

E-mail: s-info@saed.tmg.nec.co.jp
URL: http://www.ic.nec.co.jp/micro/


RX4000
日本電気(株)

【概要】

VRシリーズ・リアルタイムOS RX4000は、64ビットマイクロプロセッサ VRシリーズ用の製品です。RX4000は、RXシリーズの中でもっとも機能が豊富な製品で、オリジナルシステムコールとしてシグナルハンドラをサポートしています。

【特長】

  1. μITRON3仕様に準拠
  2. ROM化を意識したコンパクトな設計

    組込み用途に使用されるため、最大カーネルサイズを約23Kバイトに抑えています。また、RX4000をユーザ・アプリケーションとリンクする際にはお客様の使用されるシステムコールだけを組込みますので、最適なコードサイズになります。

  3. パワー・セーブ機能をサポート

    実行タスクが存在しない場合、RX4000はパワー・セーブ機能を使用します。RX4000では、パワー・セーブ・モードをユーザが指定できます。

  4. システム構築用ツールの提供

    ユーザがシステム構築を容易にできるように、RX4000の参照するテーブルを生成するツール(コンフィギュレータ)を提供します。また、コンフィギュレータでは、使用するメモリ容量を算出しますので、メモリ容量の見積もりが簡単にできます。

  5. タスク・ディバグ環境の提供

    タスク・ディバッガとシステム・パフォーマンス・アナライザを提供しています。タスク・ディバッガは、RX4000の管理する資源の状態表示ができます。また、システム・パフォーマンス・アナライザは、タスクの実行遷移をグラフィカルに表示します。

【お問い合わせ先】

E-mail: s-info@saed.tmg.nec.co.jp
URL: http://www.ic.nec.co.jp/micro/


mKernel
川上昌之

【概要】

mKernelは、μITRON4.0仕様に準拠した組み込み制御用のリアルタイム・マルチタスクカーネルです。

【対象プロセッサ】

8ビットマイクロプロセッサ Z80 (カーネル製品型式: mK010301)

【特長】

【お問い合わせ先】

〒919-0101 福井県南条郡今庄町湯尾126-8-1
       川 上  昌 之
E-mail: kawa@ma.interbroad.or.jp

文献紹介

情報処理学会論文誌 Vol.42 No.6 (2001年6月号) に、ITRON仕様に関する論文が2編掲載されました。2編の論文はいずれも豊橋技術科学大学の研究グループによるものです。1編は、本田晋也、高田広章の両氏による「μITRON4.0仕様の例外処理のための機能とその評価」というタイトルの論文で、μITRON4.0仕様の標準化で採用されたRISC的なカーネルという考え方と、それが例外処理機能とオーバランハンドラ機能にどのように反映されたかについて述べ、仕様に準拠したカーネルを実装することで、仕様が目標を達成していることを示しています。もう1編は、若林隆行、高田広章の両氏による「ITRONデバッギングインタフェース仕様における標準化アプローチとその適応性に関する評価」というタイトルの論文です。タイトルの通り、ITRONデバッギングインタフェース仕様の標準化アプローチについて述べ、それに基づいて策定された仕様を適応性の面から評価したものです。


※ このニュースレターは、TRONWARE vol.70 に掲載されたものを、WWW で公開するために再編集したものです。

- Back to the list of ITRON Newsletter (Japanese Version)
- Back to ITRON Home Page (in Japanese)