ITRON専門委員会では、1997年6月〜1998年3月の間、RTOS自動車応用技術委 員会の活動を行いました。以下は、その活動報告です。
(社)トロン協会 ITRON専門委員会では、ITRON仕様OSの自動車応用技術に関 する調査・研究ならびに標準化を行う活動を発足させることを、自動車メーカ・ 電装品メーカ・半導体メーカ・ソフトウェア開発ツールメーカなどに対して呼 びかけ、1997年5月にはそのための準備会合を開きました。その結果、ITRON専 門委員会とは独立した任意の組織として、RTOS自動車応用技術委員会が発足す ることとなりました。RTOS自動車応用技術委員会では、1997年6月〜1998年3月 までの間に計7回のミーティングを開催し、リアルタイムOSの自動車制御応用 に関する調査・研究活動を行うとともに、ITRON仕様に対する提案のとりまと めを行いました。
ミーティングの日付と開催場所は次の通りです。
日付 | 会場 | |
準備会 | 1997年5月28日(水) | 三菱電機セミコンダクタソフトウエア 五反田オフィス |
第1回 | 1997年6月25日(水) | 東芝総合人材開発 新横浜研修センター |
第2回 | 1997年7月17日(木) | トヨタ自動車 東京本社 会議室 |
第3回 | 1997年9月10日(水) | 三菱電機セミコンダクタソフトウエア 五反田オフィス |
第4回 | 1997年10月24日(金) | 東芝 半導体システム技術センター |
第5回 | 1997年12月11日(木) | 富士通 クロスカルチャーセンター |
第6回 | 1998年1月29日(木) | 三菱電機セミコンダクタシステム 研修センター |
第7回 | 1998年3月2日(月) | 日本電気 玉川クラブ |
1997年5月に開かれた準備会では、ITRON専門委員会から呼びかけの趣旨の 説明と、ITRONプロジェクトの最近の状況について紹介が行われ、委員会の名 称や今後の活動計画について議論が行われました。議論では、自動車制御分野 と自動車内の情報機器分野では要求事項や標準化動向が大きく異なり、一緒に 議論することの難しさが指摘されたました。制御分野に関しては、OSEK/VDX プロジェクトなど海外の動きの調査研究を行うとともに、ITRON仕様OSに 対する要求事項を取りまとめていくこととなりました。
それを受けて、1997年6月の第1回のミーティングでは、制御分野と情報分 野のミーティングを別々に行いました(同じ日に連続開催)。制御分野のミー ティングでは、調査研究の一環として、μITRON仕様ならびにOSEK/VDX OS仕様 の勉強会を開始しました。それに対して、情報分野のミーティングでは、カー ナビゲーションシステムをはじめとして、すでにITRON仕様OSが広く使われて おり、明確な活動目標を見いだせないという結論となり、休眠状態とすること になりました。
第2回のミーティングでは、OSEK/VDXプロジェクトのchairmanである Karlsruhe大学のUwe Kiencke教授を招き、OSEK/VDXプロジェクトとITRONプロ ジェクトの協力関係について意見交換を行いました。その結果、OSEK/VDXプロ ジェクトとITRON専門委員会の間で、以下のことを合意しました。
なお、第2回ミーティングの前日には、ITRON専門委員会主催のITRONオープンセミナーにおいて、 Kiencke教授にOSEK/VDXプロジェクトの概要の紹介をお願いするとともに、 RTOSのカーエレクトロニクスへの応用と標準化に関するパネルセッションを行 いました。
1997年10月の第3回ミーティング、11月の第4回ミーティングにおいては、 OSEK/VDXプロジェクトの調査研究の続きとして、OSEK/VDX通信仕様ならびにネッ トワーク管理仕様の勉強会と、1997年10月7日に開催されたOSEK/VDXプロジェ クトのワークショップの報告が行われました。また、自動車メーカの方から、 車両制御用のリアルタイムOSに対する要求事項について発表をいただきました。
1998年に入り、第5回〜第7回のミーティングにおいては、トヨタ自動車 第3電子技術部から提案のあった「自動車制御用リア ルタイムOS仕様(案)」と、「待ち状態のない μITRON仕様」の2つのリアルタイムOS仕様案に関して検討が進められ、そ の結果、2つの仕様案が委員会の成果として取りまとめられました。またそれ と並行して、自動車内で用いるネットワーク仕様の勉強会、OSEK/VDX OS仕様 に準拠したOS製品の紹介、ITRON専門委員会で検討中のμITRON4.0仕様の概要 の紹介などが行われました。
RTOS自動車応用技術委員会で取りまとめられた2つのリアルタイムOS仕様案 については、次世代のμITRONリアルタイムカーネル仕様であるμITRON4.0仕 様に反映する方向で検討されています。OSEK/VDX通信仕様のプロトコルの ITRON仕様OS上でのAPIの標準化については、OSEK/VDX通信仕様の最終フィック スが遅れているために、1998年度以降の課題となりました。