(社)トロン協会 ITRON部会
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トロン協会 ITRON部会では、1999年11月よりワーキンググループを設けてJTRON2.0仕様の改訂作業を行ってきましたが、この度その結果を JTRON2.1仕様として公開することとなりました。
JTRON仕様は、ITRON仕様カーネル上に Java実行環境を実装し、両者の利点を活用してアプリケーションシステムを構築することを可能にするためのインタフェースを規定するものです。具体的には、ITRON仕様カーネル上のタスク(リアルタイムタスク) と Java実行環境上で動作するプログラム (Javaプログラム) との間の通信インタフェースを標準化しています。主にITRON仕様カーネル上での使用を想定していますが、仕様の大部分は他のリアルタイムOSにも適用可能です。
JTRON2.1仕様では、リアルタイムタスクとJavaプログラムとの間の通信方法として、JavaプログラムからITRON仕様カーネルの資源をアクセスするためのインタフェース (タイプ1)、Javaプログラムとリアルタイムタスクの間でJavaのオブジェクトを共有するためのインタフェース (タイプ2)、Javaプログラムとリアルタイムタスクがストリームで通信するインタフェース (タイプ3)の3種類の通信インタフェースを規定しています。この内、タイプ1のインタフェースは、JTRON1.0仕様で規定したインタフェースをベースに、最新のμITRONカーネル仕様であるμITRON4.0仕様に対応させたものです (JTRON1.0仕様はμITRON3.0仕様対応)。タイプ2およびタイプ3のインタフェースは、JTRON2.0仕様で導入したものですが、JTRON2.1仕様においては、タイプ2のインタフェースをJava言語のネイティブインタフェースである JNI (Java Native Interface) に対応するよう改訂しました。その他にも、仕様の細部の改良や記述の明確化を行いました。
JTRON2.1仕様は、他のトロン仕様と同様にオープンな仕様であり、誰でも自由にライセンス料なしに利用することができます。仕様書の全文は、ITRONプロジェクトホームページからダウンロードすることができます (現時点では日本語版のみ)。
トロン協会 ITRON部会では、組込みシステムにおけるリアルタイムOSの利用動向に関するアンケート調査を、2000年11月から2001年1月にかけて実施いたします。このアンケート調査は、組込みシステムの開発技術者を主な調査対象として、リアルタイムOSの利用の現状や問題点、ITRON仕様に対する評価などについて調査するもので、1996年より毎年実施しています。調査結果は、プロジェクトの今後の方針決定や広報活動に役立てるとともに、ITRONプロジェクトホームページで公開しており、多くの方に参考にしていただいています。
アンケート調査票は、MST2000 (マイコンシステム&ツールフェア2000) の会場で配布するとともに、インターネット上でwebを用いて回答できるようにする予定です。また、アンケート調査への協力をお願いを、電子メールや郵送などにより送付します。アンケート用紙や調査への協力のお願いがお手元に届きました際には、何卒ご協力いただけるようお願い申し上げます。
前号を発行して以降、2000年10月1日までに、新規に登録されたITRON仕様準拠製品は別表の通りです。Nucleus μiPLUS の登録会社は(株)グレープシステムですが、(株)グレープシステムは日本における販売代理店であり、開発元は米国の Accelerated Technology, Inc. です。なお、最新の全登録製品リストは、ITRONプロジェクトホームページにあります。
仕様 | 製品名 | 対象プロセッサ | 会社名 |
---|---|---|---|
μITRON4.0 | Nucleus μiPLUS | MPC98k, PPC860, ARM7, V850e, SH3, SH4 | (株)グレープシステム |
ITRON仕様準拠製品登録制度へ登録申請および新しく設けた事前割当て申請に基づき、次の通りメーカーコードの割当てを行いました。 2000年10月1日時点で、ITRON部会が編集し、発行されているITRON関連の書籍は別表の通りです。ご希望の方は、各発売元にお問い合わせください。 µITRON3.0標準ハンドブック 改訂新版には、µITRON3.0仕様の最新バージョン (Ver 3.02.02) が収められています。旧版のµITRON3.0標準ハンドブック (Ver 3.00.00) から Ver 3.02.00 への改訂点は、ITRON標準ガイドブック2 に掲載されています。Ver 3.02.00 から Ver 3.02.02 へは、構成の変更や説明の追加だけで、仕様の技術的な内容の変更はありません。 ITRON・µITRON標準ハンドブックは、µITRON Ver 2.0 と ITRON2 の仕様書を1冊にまとめたものです。発行元で品切れとなったため、発行元のホームページで公開されています。 ITRON標準ガイドブック'92-'93はµITRON仕様 Ver 2.0 と ITRON2仕様を、ITRON標準ガイドブック2 はµITRON3.0仕様をメインのターゲットとして作成されています。前者はタイトルに過去の年号が含まれていますが、µITRON仕様 Ver 2.0 や ITRON2仕様を使われている場合には、現在でも有効に活用できます。メーカーコードの割当て
0x010f Accelerated Technology Incorporated 0x0110 (株)エルミックシステム 0x0111 エフ・ジェイ・ビー・ウェッブテクノロジー(株) ITRON関連書籍の一覧
書籍名 | 分類 | 価格 | 発行元 | 発行年 | ISBN番号 |
---|---|---|---|---|---|
ITRON・µITRON標準ハンドブック | 和文仕様書 | 発行元品切れ | パーソナルメディア | 1990 | ISBN4-89362-079-7 |
µITRON3.0標準ハンドブック 改訂新版 | 和文仕様書 | 4,000円 | パーソナルメディア | 1997 | ISBN4-89362-154-8 |
µITRON4.0仕様 (Ver. 4.00.00) | 和文仕様書 | 5,000円 (税込み) | トロン協会 | 1999 | − |
ITRON標準ガイドブック'92-'93 | 和文参考書 | 3,500円 | パーソナルメディア | 1992 | ISBN4-89362-197-6 |
ITRON標準ガイドブック2 | 和文参考書 | 3,500円 | パーソナルメディア | 1994 | ISBN4-89362-133-5 |
ITRON TCP/IP API仕様 (Ver. 1.00.01) | 和文仕様書 | − | トロン協会 | 1998 | − |
ITRONデバッギングインタフェース仕様(Ver. 1.A0.00 暫定仕様書) | 和文仕様書 | − | トロン協会 | 2000 | − |
JTRON2.1仕様 (Ver. 2.01.00) | 和文仕様書 | − | トロン協会 | 1998 | − |
µITRON Specification Ver 2.01.00.00 | 英文仕様書 | 12,000円 | トロン協会 | 1989 | − |
ITRON2 Specification Ver 2.02.00.10 | 英文仕様書 | 15,000円 | トロン協会 | 1990 | − |
µITRON3.0 Specification Ver 3.02.00 | 英文仕様書 | − | トロン協会 | 1994 | − |
µITRON3.0: An Open and Portable Real-Time Operating System for Embedded Systems | 英文仕様書 | $40.00 | IEEE CS Press | 1997 | ISBN0-8186-7795-3 |
JTRON2.0 Specification (Ver. 2.00.00) | 英文仕様書 | − | トロン協会 | 1999 | − |
トロン協会では、9月4日(月)に、三菱電機セミコンダクタシステム(株) 半導体研修センター (東京都品川区) において、ITRON仕様セミナーを開催しました。このセミナーは、ITRON仕様に準拠したリアルタイムOSの基礎知識ならびにそれを用いたアプリケーションシステム構築のための基礎知識の習得を目的としたものです。
セミナーの内容は、午前中 (10:00〜12:00) の講演において、リアルタイムOSの基礎知識とITRONプロジェクトの概要に関する紹介が、豊橋技術科学大学/ITRON部会幹事の高田広章氏よりありました。午後 (13:30〜16:30) には、三菱電機セミコンダクタシステム(株) の平井雅子氏により、μITRON仕様の機能とアプリケーションシステム構築の基礎に関する解説が行われました。セミナーの内容はおおむね好評でしたが、時間が短すぎるという意見が聞かれました。
このセミナーには、募集定員の60名を大きく越える方から参加申込みをいただきましたが、会場の関係で先着の60名で受付を締め切らせていただきました。多数の方に参加いただいたことにお礼申し上げるとともに、参加いただけなかった方にお詫びいたします。トロン協会では、今回参加できなかった方のために、同様のセミナーを再度開催することを計画しています。
トロン協会 ITRON部会では、9月24日(日)〜28日(木) に米国カリフォルニア州 San Jose の San Jose Convention Center で開催された Embedded Systems Conference (ESC) に出展するとともに、その会期中の 9月27日(水) に、展示会場近くのホテルにおいて ITRON International Meeting 2000 を開催しました。
ITRON International Meeting は、米国において ITRON仕様に関わっている方にプロジェクトの最近の活動状況を紹介するとともに、ITRON仕様に関連する製品を紹介することを目的としたもので、今回が4回目の開催となります。前回までと同様に、米国を中心にオープンな標準化活動を行っているThe OpenGroup との協力で開催し、JETRO (日本貿易振興会) からの援助を頂きました。
会議の開催概要は次の通りです。
会議には、関係者を含めて約80名の参加があり、満足すべき結果でした。また、同日の夕方には、ITRON部会 北米支部準備委員会のミーティングとその懇親会を行いました。北米支部準備委員会のミーティングでは、支部設立に向けての議論と、次回のESCでの広報活動の計画について議論しました。
また、ITRON部会では、例年通りESCの展示会に出展し、ITRON仕様に関する広報活動を行いました。今回は、US Software社のブースの一角をお借りして、μITRON仕様やJTRON仕様などについて紹介するとともに、ブース内のプレゼンテーションスペースにおいて、ITRONプロジェクトの概要を紹介するプレゼンテーションを行いました (毎日1回で計3回実施)。
なお、次回のESCは、San Jose Convention Center が手狭になったことから場所を San Francisco に移動し、時期も4月に開催される予定です。ITRON部会では、次回のESCにも今回と同様に会員会社 (Accelerated Technology,Inc. の予定) のブースの一角をお借りする形で出展するとともに、展示会の会期中に ITRON International Meeting を開催する計画です。
ITRONニュースレター No.43, No.45 でお知らせした通り、トロン協会 ITRON部会では、OSEK/VDXプロジェクトに対してデバッギングインタフェース仕様に関する共同の標準化活動の実施を提案してきましたが、それを受けて発足した OSEK/VDX Debug Interface WG の第1回のミーティングが、10月2日(月)にドイツの Stuttgart で開催されました。このミーティングは、ITRONプロジェクトとの合同ミーティングという形ではありませんでしたが、ITRONプロジェクトの関係者も数名参加しました。
ミーティングでは、ITRON部会幹事の高田広章氏 (豊橋技術科学大学) がITRONデバッギングインタフェースと考え方と標準化状況について紹介した後、OSEK/VDX仕様OSのメーカなどが検討を進めてきた ORTI (OSEK Run Time Interface) の紹介があり、OSEK/VDX Debug Interface の標準化の今後の進め方について議論が行われました。その結果、ITRONデバッギングインタフェース仕様のアプローチの利点が認識されたものの、μITRON仕様とOSEK/VDX OS仕様の性格の違いもあり、最初の時点では ORTI をベースとして標準仕様を詰めていくことになりました。ただし、ORTI のアプローチでは限界があることも認識されており、ORTI の拡張を検討する時点で、ITRONデバッギングインタフェース仕様との整合性を再検討することとなりました。
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