(社)トロン協会 ITRON部会
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ITRON部会では、OSEK/VDXプロジェクトのワークショップ (ITRONニュースレター No.43参照) などの場で、OSEK/VDXプロジェクトに対してデバッギングインタフェース仕様に関する共同の標準化活動の実施を提案してきましたが、この提案がOSEK/VDXプロジェクトの Steering Committee で承認され、共同標準化活動を開始することになりました。具体的な進め方については、現在、両プロジェクトで協議中です。
ITRONニュースレター No.41で、ITRONデバッギングインタフェース暫定仕様書の公開の予定をアナウンスしましたが、細部の詰めに時間がかかり、公開が遅れていました。まだ、不完全な箇所が残っているものの、暫定仕様書として公開できるレベルに達したと判断し、公開することになりました。
ITRONデバッギングインタフェース暫定仕様書は、デバッグツール (デバッガやICEなど) がµITRON4.0仕様に準拠したリアルタイムカーネルをサポートするための標準的なインタフェースを規定するもので、µITRON4.0仕様研究会 デバッギングインタフェース仕様WGでの約1年半に渡る検討を通じて作成されました。標準化のアプローチとして、リアルタイムカーネルに新たな機能を追加するのではなく、デバッグツール側に埋め込んでリアルタイムOS上のソフトウェアのデバッグをサポートする機能を実現するモジュールを標準化するという独特のアプローチを採っています。
今後、この仕様書を英語化し、前述のOSEK/VDXプロジェクトとの共同標準化活動のベースとするとともに、仕様を評価するための実装作業を進め、その結果や暫定仕様書に対していただいたコメント等をフィードバックして、仕様を改良していく予定です。
トロン協会では、情報処理振興事業協会 (IPA) による「次世代デジタル応用基盤技術開発事業」の採択テーマの一つとして、情報家電のための分散ソフトウェアプラットフォームの構築 (通称: JCGプロジェクト) を進めてきましたが、当初の予定通り1999年度末までにソフトウェア開発を完了し、その成果を公開することとなりました。
JCGプロジェクトの開発成果物であるソフトウェアは、フリーソフトウェアとして無償でご利用いただくことができます。すでに、IPA主催の成果報告会やITRONオープンセミナーなどの場でCD-ROMの形で配布しましたが、準備ができ次第、ITRONプロジェクトホームページからもダウンロード可能とする予定です。また、OEM目的での改造や異なるハードウェアプラットフォームへの移植についても、対応窓口を設ける予定です。
トロン協会では、例年と同様に、昨年の11月から今年の年頭にかけてリアルタイムOSの利用動向とITRON仕様OSに関するアンケート調査を実施しましたが、この度その調査結果がまとまりました。
この調査は、組込みシステムの開発技術者を主な調査対象として、組込みシステム開発の現状とリアルタイムOSの問題点や選択基準、ITRON仕様OSの利用動向とユーザによる評価などを調査するもので、1996年度から毎年実施しています。組込みシステムに関する展示会や郵送によりアンケート調査票を配付した結果、896名の方に回答をいただくことができました。調査にご協力いただきました方々に、厚くお礼申し上げます。
リアルタイムOSのシェアについては、今年度からアンケートの内容を若干見直し、最近開発した組込みシステムに組み込んだOSと組み込んだOSのAPIを別々に回答していただきました。組み込んだOSのAPIの項目では、36.5%のシステムがITRON仕様を用いているという結果が得られ、ITRON仕様が国内において業界標準仕様の地位を確かなものにしていることが確認できました。また、これまでの4回の調査から、ITRON仕様OSを用いている比率が年々増加していることがわかりました。それに対して、OSを用いていないシステムと、自社用のOSを用いているシステムの比率は、いずれも減少傾向にあります。
その他にも、組込みシステムが大規模化の傾向にあることがデータで確認できたなど、興味深い結果が得られています。調査結果の詳細についてはITRONプロジェクトホームページで公開する予定ですので、そちらをご参照くだされば幸いです。
ITRON部会では、米国カリフォルニア州 San Jose において開催される Embedded Systems Conference (ESC) において、例年と同様に、ITRONプロジェクトに関する広報活動を行うとともに、その会期にあわせて ITRON International Meeting の開催を計画しています。ITRON International Meeting は、主に米国においてITRONプロジェクトに興味を持つ方を対象として、ITRONプロジェクトやITRON仕様に関する最新の状況をお知らせすることを目的としたものです。
具体的には、ESCの会期中の9月27日(水)に、ESCが開かれる San Jose Convention Center の近くのホテルにおいて開催する予定です。ミーティングの内容については現在検討中で、詳しいことが決まり次第ITRONプロジェクトホームページでお知らせする予定です。ESCに参加される方は、ITRON International Meeting へもご出席いただけると幸いです。
2000年6月から、松下電器産業(株)がITRON部会の委員メンバに、(株)エルミックシステムがオブザーバメンバに加わりました。なお、ITRON部会の最新のメンバリストは、ITRONプロジェクトホームページで参照することができます。
(株)エルミックシステムは、Embedded System Solution Providerとして、 RTOSからミドルウェア、組込用アプリケーションまで幅広い製品をご提供しております。また、ハードウェアの開発やドライバの開発等、システム構築サービスも行っております。特にミドルウェアとして、TCP/IPプロトコルとISDNプロトコルで高い実績があり、BluetoothやVoIP等最新の組込用ミドルウェアの開発も行っております。また、WindowsとµITRONを共存させ、Windows環境でリアルタイム性を実現するシステム「Accel-µ」、高速TCP/IPプロトコルスタック「Kasago TCP/IP」など、システムの高速化をキーワードとして組込システム構築を強力にバックアップします。
2000年4月1日時点で、ITRON部会が編集し、発行されているITRON関連の書籍は別表の通りです。ご希望の方は、各発売元にお問い合わせ下さい。
µITRON3.0標準ハンドブック 改訂新版には、µITRON3.0仕様の最新バージョン (Ver 3.02.02) が収められています。旧版のµITRON3.0標準ハンドブック(Ver 3.00.00) から Ver 3.02.00 への改訂点は、ITRON標準ガイドブック2 に掲載されています。Ver 3.02.00 から Ver 3.02.02 へは、構成の変更や説明の追加だけで、仕様の技術的な内容の変更はありません。
ITRON・µITRON標準ハンドブックは、µITRON Ver 2.0 と ITRON2 の仕様書を1冊にまとめたものです。発行元で品切れとなったため、発行元のホームページで公開されています。
ITRON標準ガイドブック'92-'93はµITRON仕様 Ver 2.0 と ITRON2仕様を、ITRON標準ガイドブック2 はµITRON3.0仕様をメインのターゲットとして作成されています。前者はタイトルに過去の年号が含まれていますが、µITRON仕様 Ver 2.0 や ITRON2仕様を使われている場合には、現在でも有効に活用できます。
書籍名 | 分類 | 価格 | 発行元 | 発行年 | ISBN番号 |
---|---|---|---|---|---|
ITRON・µITRON標準ハンドブック | 和文仕様書 | 発行元品切れ | パーソナルメディア | 1990 | ISBN4-89362-079-7 |
µITRON3.0標準ハンドブック 改訂新版 | 和文仕様書 | 4,000円 | パーソナルメディア | 1997 | ISBN4-89362-154-8 |
µITRON4.0仕様 (Ver. 4.00.00) | 和文仕様書 | 5,000円 (税込み) | トロン協会 | 1999 | − |
ITRON標準ガイドブック'92-'93 | 和文参考書 | 3,500円 | パーソナルメディア | 1992 | ISBN4-89362-197-6 |
ITRON標準ガイドブック2 | 和文参考書 | 3,500円 | パーソナルメディア | 1994 | ISBN4-89362-133-5 |
ITRON TCP/IP API仕様 (Ver. 1.00.01) | 和文仕様書 | − | トロン協会 | 1998 | − |
JTRON2.0仕様 (Ver. 2.00.00) | 和文仕様書 | − | トロン協会 | 1998 | − |
µITRON Specification Ver 2.01.00.00 | 英文仕様書 | 12,000円 | トロン協会 | 1989 | − |
ITRON2 Specification Ver 2.02.00.10 | 英文仕様書 | 15,000円 | トロン協会 | 1990 | − |
µITRON3.0 Specification Ver 3.02.00 | 英文仕様書 | − | トロン協会 | 1994 | − |
µITRON3.0: An Open and Portable Real-Time Operating System for Embedded Systems | 英文仕様書 | $40.00 | IEEE CS Press | 1997 | ISBN0-8186-7795-3 |
JTRON2.0 Specification (Ver. 2.00.00) | 英文仕様書 | − | トロン協会 | 1999 | − |
6月7日(水)〜9日(金)に、東京ビッグサイトにおいて開催された ESS2000 システムLSIソリューションフェア (主催: (社)日本電子工業振興協会) のConference において、ITRON部会 副査/富士通デバイス(株)の工藤健治氏とパーソナルメディア(株)の松為彰氏によって、「ITRONプロジェクトの最近の動向とTRON GUI仕様の概要」というタイトルの講演が行われました。この Conference においては、トロンプロジェクトリーダ/東京大学の坂村健氏による「情報通信技術の発展とその期待について」というタイトルの講演も行われました。またトロン協会では、ESS2000の展示会にブースを出展し、主にITRON仕様について紹介する展示を行いました。
ここでは、ITRONに関連する開発ツールやミドルウェアなどについて、簡単な紹介をします。
エルミックシステムは、Windows(R)CE(*1)とµITRON(*2)との2つのOSを共存させる製品Accel-µ(*3)を開発しました。Accel-µにより、既存のµITRON仕様のOSで構築されたシステムを容易にWindows(R)CE上のシステムと共存させることができます。Accel-µに付属するµITRON3.0仕様準拠のOSでシステムを構築します。コミュニケーション・ドライバでWindows(R)CE上で動作するシステムとデータの送受信を行うことができます。現在、日立製作所のSH3 CPU上で動作しています。今後、SH4、INTEL x86 CPUへの対応を行っていきます。
Windows(R)CEにコミュニケーション・ドライバを登録し、Accel-µが動作するメモリ環境を設定することで、Accel-µが動作する環境が構築できます。ドライバを登録するだけですので、Windows(R)CEのバージョンに依存しません。
Accel-µは、Windows(R)CEから割り込みを先取りします。µITRONで処理すべき割り込み処理を優先しますので、高速な割り込み処理を行うことができます。
Windows(R)CEをµITRONの最低優先度のタスクとしていますので、µITRONのシステムを優先して処理することができます。
µITRONとWindows(R)とのコミュニケーション・ドライバで、OS間のデータ送受信を行うことができます。
µITRON3.0仕様に、ミューテックス機能を追加しています。システムコールのパラメータチェックの行わない指定を行うことで、20%程度のパフォーマンスの向上を行うことができます。
株式会社エルミックシステム
TEL 045-664-5171(代表)
*1 : Windows(R)CEは、米国MicroSoft社の登録商標です。
*2 : µITRONは、Micro Industrial TRONの略です。
*3 : Accel-µ技術は、特許申請中です。
その他、本文中にある製品名は、各社の登録商標です。
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