(社)トロン協会では、組込みシステムにおけるリアルタイムOS利用の現状を把握し、ITRONプロジェクトの今後の進め方の参考とするために、毎年1回、組込みシステムにおけるリアルタイムOSの利用動向に関するアンケート調査結果を実施している。ここでは、1999年末から2000年頭にかけて実施したアンケート調査の実施概要とその結果を報告する。なお、今回のアンケート調査では、家電製品のネットワークシステムに関する調査も同時に行ったが、その結果については別に報告することとし、ここでは触れない。
実施したアンケート調査は、組込みシステム開発の現状とリアルタイムOSの問題点や選択基準、ITRON仕様OSの利用動向とユーザによる評価、ITRONプロジェクトに対する期待事項などを調査するものである。同様の内容のアンケート調査は1996年度から実施しており、今回が4回目の実施となる。今回の調査では、これまでの調査結果を踏まえて、アンケート内容の一部見直しを行った。また上述の通り、今回は家電製品のネットワークシステムに関する調査も同時に行った。
1999年11月〜2000年1月
アンケート用紙を次の2つの方法で配布し、回答を収集した。
組込みシステムに関する展示会やセミナーにおける配布としては、1999年11月に東京で開催されたマイコンシステム&ツールフェア'99(MST'99)のトロン協会のブースにおいてアンケート用紙を配布し、可能な方についてはその場で回答をお願いした。また、同月東京で開催されたモトローラ(株)主催の「Motorola & embedded Partner Conference(MPC)」においても、アンケート用紙を配布した。ダイレクトメールは、前回のアンケート回答者を中心に、業界団体の名簿など用いて送付した。送付先は、すべて日本国内である。
上記の方法でアンケート用紙を配布したところ、合計で911通の回答を回収することができた。ただし、同一回答者による二重回答が15通あったため、有効な回答数は896通である。この数は、前回の調査(678通)の約1.3倍、前々回の調査(438通)の約2倍で毎回約1.3〜1.5倍の割合で増加している。
配布方法別の配布数と回答数は次の通りである。
配布数 | 回答数 | 回収率 | |
---|---|---|---|
MST'99 | 645 | 421 | 65.3% |
MPC | 134 | 9 | 6.7% |
ダイレクトメール | 1951 | 481 | 24.7% |
展示会におけるアンケート用紙配布では、配布したその場で回答することを原則としたため、極めて高い回収率が得られた(前回調査では 37.9%)。ダイレクトメールで配布した分の回収率は、前回(27.1%)、前々回(24.2%)とほぼ同じであるが、配布数を増やしたために、前回より多くの回答数を得ることができた。
アンケート調査の趣旨から、リアルタイムOSの(潜在的な)ユーザである組込みシステムの開発技術者を主な想定回答者としてアンケートを作成している。調査項目は次の通りである。
最も最近開発した組込みシステムについて、アプリケーション分野、システムの規模(プロセッサ種別とプログラムサイズ)、用いたプログラミング言語、組み込んだOS(製品名と使用したAPI)を問う項目。
なお、前回までのアンケート調査では、最近開発した最大3つの組込みシステムについて問う項目となっていたが、複数のシステムについて回答する回答者が減っていることと、アンケートを単純化する目的で、今回は1つのシステムに限定することとした。また、組み込んだOSに関して問う項目を修正した(詳しくは後述する)。
組込みシステム開発にリアルタイムOSを用いる上で問題となっている点と、リアルタイムOSの選択基準について問う項目。
アンケート回答者のITRON仕様OSとの関わりを問う項目。
なお、前回までのアンケートに含まれていたITRON関連の仕様や委員会・研究会活動、普及広報活動などに関する周知度に関する調査は、調査する意義が低いことから、今回は含めないこととした。
ITRON仕様OSを使用/開発ないしは調査/検討したことがある人に対して、ITRON仕様OSの長所と短所を問う項目。
ITRON仕様や組込みシステムに関連する情報の入手先について問う項目。この項目は、効率化な広報活動を進める上で重要と考え、今回のアンケート調査から新たに盛り込んだ。
ITRONプロジェクトに関連する活動として何を期待するかを問う項目。
アンケート回答者の職種を問う項目では、設計・開発・研究という回答が約85%を占めており、アンケートが想定した対象者に対して実施されたことが確認できる。
職種 | 割合 |
---|---|
設計・開発・研究 |
84.9%
|
企画・管理 |
5.8%
|
営業技術・営業支援 |
5.1%
|
その他 |
2.8%
|
無回答・不明 |
1.3%
|
アンケート調査結果を集計する際に、正しい回答と解釈できないものについては、原則として項目毎に無効と扱った。具体的には、一つの選択肢のみを選ぶべき項目で、複数の選択肢を選んだ場合は無効とした。また、該当する選択肢を複数選べるとした項目では、最も該当するものに「1」、2番目と3番目に該当するものにそれぞれ「2」「3」を記入してもらう形を取ったが、例えば「1」が複数あるなど、これに従わない回答も無効とした。
該当する選択肢を複数選べるとした項目を集計する場合には、「1」を記した回答の回答数に対する比率(これを「単数回答」と呼ぶ)と、「1」「2」「3」のいずれかを記した回答の回答数に対する比率(これを「複数回答」と呼ぶ)を示す(よって「2」と「3」は区別していない)。「単数回答」の比率は、合計すると100%となるため、集計結果を円グラフで示した。「複数回答」については、合計すると100%を越えることになるため、集計結果を棒グラフで示した。この際に、「1」を記した回答(単数回答)と、「2」「3」を記した回答(複数回答)を区別した。
アンケート回答者ないしは回答者の所属する会社が最も最近開発した組込みシステムについて、アプリケーション分野、使用したプロセッサの種別、プログラムサイズ、用いたプログラミング言語、組み込んだOS(製品名)、組み込んだOSで使用したAPIの6項目を質問した。
例えば「アプリケーション別の組み込みOS」といったクロス集計をするために、 6項目の内に1つでも無効の回答がある場合には、その組込みシステムに関する回答全体(つまり、6項目すべて)を無効とした。項目毎に集計する場合には、無効な回答を項目毎に除外する方法もあるが、クロス集計の合計が項目毎の集計と一致しなくなるといった問題が起こるために、このような方法を採っている。
その結果、有効となった回答の数は684件となった。この数については、回答するシステムの数を1つに限定したことから、前回(945件)に比べて7割強に減少し、前々回(675件)とほぼ同数となった。以下、この節での比率の計算は、この数を母数とする。
コンシューマ向けの機器(家電機器,AV機器,娯楽/教育機器,個人用情報機器,通信機器(端末))が約39%、工業用の機器(工業制御/FA機器)が約18%、残りはその他の産業用機器となっている。コンシューマ機器は、1種類の機器あたりの生産個数は多いが、設計の数(つまり機器の種類)は少ないため、日本で開発されている組込み機器の内訳としては、おおよそ妥当な調査結果と考えられる。
前回調査との比較では、大きな傾向は変わらないものの、通信機器(端末)の比率が3.5%増加したことが目立つ。これは、最近の携帯電話の発展によるものと推測することができる。
分野 | 割合 |
---|---|
家電機器 | 3.2% |
AV機器 | 10.2% |
娯楽/教育機器 | 1.8% |
個人用情報機器 | 3.5% |
パソコン周辺機器およびOA機器 | 7.2% |
通信機器(端末) | 12.9% |
通信機器(ネットワーク設備) | 9.6% |
運輸機器 | 8.5% |
工場制御/FA機器 | 18.5% |
医療機器/福祉機器 | 3.8% |
設備機器 | 3.4% |
その他の業務用機器 | 7.0% |
その他の計測機器 | 6.3% |
その他 | 4.5% |
32ビットプロセッサが占める率が約58%と最も高く、次いで16ビット、8ビットの順となっている。組込みシステムの分野においても、32ビットプロセッサが主流となっていることがわかる。前回調査との比較では、32ビットプロセッサの比率が大きく増加(46.6%→58.0%)し、その分、16ビット、8ビットのプロセッサが減少している。64ビットプロセッサが2倍程度、DSPなどの専用プロセッサも3割程度増加しているが、まだまだ絶対数は少ない。
前回までの調査では、最近開発した最大3つの組込みシステムについて回答をお願いしていたが、リアルタイムOSに関する調査であることから、多く種類のシステムを開発している場合には、(リアルタイムOSを使っているような)大規模なシステムを回答対象に選ぶ傾向があると予想していた。また、1つの機器に複数のプロセッサを使っている場合には主たるプロセッサについて答えることをお願いしていることからも、4ビットや8ビットのプロセッサが実際よりも少なくなっていると予想していた。今回、「最も最近開発した組込みシステム」について回答してもらうことでこの効果が薄まったものと思われるが、得られた結果は、前回よりも大きいシステムが増えているという結果となった。
プロセッサの種別 | 割合 |
---|---|
4ビット
| 0.4%
|
8ビット
| 7.7%
|
16ビット
| 26.9%
|
32ビット
| 58.0%
|
64ビット
| 3.8%
|
DSPなどの専用プロセッサ
| 3.1%
|
大雑把な比率として、プログラムサイズが64KB未満、64KB以上256KB未満、256KB以上1MB未満、1MB以上が、3:6:7:7という結果が得られた。前回までの調査では、この4つ分類で回答がほぼ4等分されていたことと比較すると、64KB未満の小規模なシステムの減少が目立つ。
用いたプロセッサの項目とあわせて、組込みシステムが、ハードウェアとソフトウェアの両面で大規模化していることを裏付ける結果となった。同様の傾向は前回までの調査でも見られたが、今回の調査では大規模化の傾向が特に著しいものとなっている。
プログラムサイズ | 割合 |
---|---|
64kB未満
| 13.5%
|
64kB以上256kB未満
| 25.7%
|
256kB以上1MB未満
| 31.6%
|
1MB以上4MB未満
| 16.1%
|
4MB以上16MB未満
| 10.1%
|
16MB以上
| 3.1%
|
主に用いたプログラミング言語(単数回答)では、C言語が約8割、アセンブリ言語が約1割である。前回との比較では、C言語が約1割増加し、その分、アセンブリ言語の使用率が低下している。ただし、複数回答で見ると、アセンブリ言語が前回同様の高い比率となっており、C言語とアセンブリ言語を併用する傾向は変わらないものの、主に使う言語がC言語に移行している傾向が見られる。
C++は単数回答で約7%、複数回答で約13%と、前回に比べてやや増加している。また、Javaについても増加の傾向が見られる。その他の言語としては、VisualBasic、PL/1、FORTHなどの回答が見られた。
プログラミング言語 | 回答率 | |
---|---|---|
単数回答 | 複数回答 | |
アセンブリ言語 | 10.5% | 47.7% |
C言語 | 80.1% | 85.1% |
C++言語 | 7.3% | 13.3% |
Java言語 | 0.9% | 2.8% |
その他 | 1.2% | 1.8% |
この項目と次の項目については、前回までの調査から大きな変更を加えた。具体的には、前回までの調査では、OSの種類が決まればAPIは決まるという考え方から、組み込んだOSを問う項目の選択肢に「市販のITRON仕様のOS」や「自社用のITRON仕様のOS」を含めていた。ところが最近、複数のAPIを持つOSが増えてきており、特にITRON仕様のAPIと独自のAPIをあわせ持つOSが登場したことから、組み込んだOS(製品名)と用いたAPIを別々の項目で問うこととした。
組み込んだOSに関する項目の全体的な傾向としては、OSを用いていないものと自社用のOSがいずれも約22%、半導体メーカ製のOSが約16%、その他(主にソフトウェアメーカ製のOS)が約40%となっている。前回調査との比較では、OSを用いていないもの(27.8%→21.8%)と、自社用のOS(29.4%→22.2%、前回調査は「自社用のITRON仕様OS」と「自社用の独自仕様OS」を加えた数字)が、いずれも大きく減少しているのが目立つ。
個別のOSでは、VxWorks(WindRiver Systems社)が約8%と最も多い。また、前回調査からの増加(4.2%→8.3%)も著しい。ただし、WindowsとMS-DOSを加えると9%を超え、メーカ別ではMicrosoft社製のOSが最も比率が大きい。また、選択肢に含めなかったために正確な比率は不明であるが、その他の市販OSの具体名としてNORTi(MISPO社)を挙げた回答が3〜4%程度ある。また、半導体メーカ製のOSとしては、国内の主要半導体メーカのOS製品名が数多く挙がっているが、製品としては細分化している。半導体メーカ製も含めて、その他のOSはいずれも2%程度以下であり、リアルタイムOSのマーケットが細分化していることが確認できる。なお、回答比率が1%未満のOSは「その他の市販OS」に含めて 集計した。
組み込んだOS | 割合 |
---|---|
自社用のOS | 22.2% |
半導体メーカ製のOS | 16.3% |
Windows | 4.4% |
VxWorks | 8.3% |
MS-DOSまたはDOS互換OS | 3.7% |
windowsCE | 2.3% |
NucleusPlus | 2.2% |
pSOS | 1.6% |
QNX | 1.3% |
OS-9 | 1.0% |
Linux | 1.0% |
その他の市販OS | 13.9% |
OSは問題があって利用していない | 3.1% |
OSは必要ないので用いていない | 18.7% |
次に、組込みシステムに組み込んだOSのAPIを問う項目では、単数回答でITRON仕様OSの比率が36.5%と最も多く、各種のOSの独自API(24.7%)よりも多くなっている。なお、この項目においても、回答比率が1%未満のAPIは「その他のAPI」に含めて集計した。
複数回答では、そもそも複数のAPIを用いたという回答自身が少なく、単数回答とほぼ同じ傾向となっている。そこで以下では、組み込んだOSのAPIとして、主に用いたものだけを使った分析結果を示す。
前回のアンケート調査との比較では、ITRON仕様OSの比率の増加(30.8%→36.5%)が目立つ。グラフには示していないが、組み込んだOSの項目とあわせて分析すると、ITRON仕様OSの中では9.8%が自社用のITRON仕様OS、15.2%が半導体メーカ製のITRON仕様OSで、その他が11.5%となっている。自社用のITRON仕様OSは、調査のたび毎に微減の傾向があるが、今回も前回に比べて減少している(12.0%→9.8%)。予想された結果ではあるが、半導体メーカ製のOSの中では、ITRON仕様OSがほとんど(9割以上)を占めている。
組み込んだOSの項目とあわせた全体傾向を前回の結果と比較すると、ITRON仕様OSとその他の市販OSの比率がいずれも目立って増加しているのに対して、自社用のOSとOSを用いていないケースが目立って減少している。この傾向は、前回までの調査ではここまで明らかにはなっていなかったことから、組込みシステムにおけるリアルタイムOSの適用が急速に進んでいることがわかる。
API | 割合 |
---|---|
ITRON仕様(μITRONを含む) | 36.5% |
Win32API | 6.6% |
POSIXまたはUNIX系API | 5.3% |
MS-DOSまたはDOS互換 | 3.9% |
OSEK/VDX OS仕様 | 1.2% |
その他のAPI | 24.7% |
OSは用いていない | 21.8% |
ここでは、組込みシステムに組み込んだOSを「ITRON仕様OS」「その他の市販OS」「自社用の独自仕様OS」「OSを用いていない」の4つに括り、アプリケーション分野別、使用プロセッサ別、プログラムサイズ別にその傾向を見る。また、アプリケーション分野別では、「OSを用いていない」ケースを除いた3つの括りだけの比率も示す。
まずアプリケーション分野別では、全体的な傾向として、コンシューマ向けの機器(家電機器、通信機器(端末)、娯楽/教育機器、AV機器、個人用情報機器)においてITRON仕様OSの使用比率が高く、いずれも40%を越えている。OSを使わなかったシステムを除くと、これらの分野のほとんどITRON仕様OSの使用比率が60%を越えており(個人用情報機器では47.6%)、コンシューマ向け機器の分野においてITRON仕様OSが広く使われていることが改めて確認できた。
前回調査との比較では、全体的な傾向は変わらないものの、個々に見ると比率が大きく変動している分野がある。ただし、アプリケーション分野によってはサンプル数が少ないため(例えば、家電製品分野のサンプル数は22件)、このデータから傾向を見ることは難しい。ただし、前回の調査分析で指摘した運輸機器分野における変化(OSを用いていないシステムの比率が減少)は、今回の調査ではその変化がいっそう急激になっている(前々回 52.2%→前回 43.2%→今回 24.1%)。また、この分野に特化した標準仕様であるOSEK/VDX仕様も、今回の調査では約10%の比率を占めている(ITRON仕様OSは約33%)。
使用プロセッサ別の組込みOSには、次のような傾向がみられる。まず、4ビットでOSを使った例はない。8ビットになると、約30%がOSを使っている。16ビットでは30%強がOSを使用せず、20%強が自社用独自仕様OSで、あわせて半数を越えている。ITRON仕様OSの比率は約30%で、その他の市販OSの比率はその半分の15%程度に留まっている。32ビットでは、約10%がOSを使用せず、約10%が自社用独自仕様OSで、あわせても5分の1強である。 残りは、ITRON仕様OSとその他の市販OSでほぼ半々(ITRON仕様OSがやや多い)である。
前回調査との比較では、OSを使っていないシステムの比率はほとんど変わっていない。それにもかかわらず、全体ではOSを使っていないシステムが増えているのは、OSの使用率の高い32ビット以上のプロセッサの比率が増えたことによる。ITRON仕様OSの比率は、DSPなどの専用プロセッサを除く各分野で微増する傾向にある。
最後にプログラムサイズ別の組込みOSは、プログラムサイズ64KB未満では、 60%強がOSを使用せず、64KB以上 256KB未満では30%弱がOSを使用していない。それぞれ、8ビット、16ビットプロセッサの場合と似た傾向にある。ITRON仕様OSの使用比率は、64KB以上 256KB未満から1MB以上 4MB未満の分野でいずれも約40%となっている。それより小さいシステム、大きいシステムのいずれにおいても、ITRON仕様OSの比率は下がる。これらの全体的な傾向は、前回の調査とほとんど同様となっている。
アプリケーション分野 | 割合 | |||
---|---|---|---|---|
ITRON | 市販OS | 自社製 | 用いていない | |
個人用情報機器 | 41.7% | 37.5% | 8.3% | 12.5% |
通信機器 (ネットワーク設備) | 36.4% | 40.9% | 19.7% | 3.0% |
通信機器 (端末) | 55.7% | 25.0% | 4.5% | 14.8% |
家電機器 | 59.1% | 13.6% | 0.0% | 27.3% |
娯楽/教育機器 | 50.0% | 25.0% | 0.0% | 25.0% |
AV機器 | 42.9% | 21.4% | 5.7% | 30.0% |
設備機器 | 21.7% | 34.8% | 4.3% | 39.1% |
運輸機器 | 32.8% | 22.4% | 20.7% | 24.1% |
工業制御/FA機器 | 29.0% | 30.6% | 20.2% | 24.1% |
パソコン周辺機器/OA機器 | 32.7% | 26.5% | 18.4% | 22.4% |
医用機器/福祉機器 | 38.5% | 34.6% | 11.5% | 15.4% |
その他の業務用機器 | 29.2% | 33.3% | 12.5% | 25.0% |
その他の計測機器 | 16.3% | 37.2% | 7.0% | 39.5% |
その他 | 35.5% | 25.8% | 9.7% | 29.0% |
アプリケーション分野 | 割合 | ||
---|---|---|---|
ITRON | 市販OS | 自社製 | |
個人用情報機器 | 47.6% | 42.9% | 9.5% |
通信機器 (ネットワーク設備) | 37.5% | 42.2% | 20.3% |
通信機器 (端末) | 65.3% | 29.3% | 5.3% |
家電機器 | 81.3% | 18.8% | 0.0% |
娯楽/教育機器 | 66.7% | 33.3% | 0.0% |
AV機器 | 61.2% | 30.6% | 8.2% |
設備機器 | 35.7% | 57.1% | 7.1% |
運輸機器 | 43.2% | 29.5% | 27.3% |
工業制御/FA機器 | 36.4% | 38.4% | 25.3% |
パソコン周辺機器/OA機器 | 42.1% | 34.2% | 23.7% |
医用機器/福祉機器 | 45.5% | 40.9% | 13.6% |
その他の業務用機器 | 38.9% | 44.4% | 16.7% |
その他の計測機器 | 26.9% | 61.5% | 11.5% |
その他 | 50.0% | 36.4% | 13.6% |
すべてのアンケート回答者に対して、リアルタイムOSの問題点と選択基準について選択肢を提示し、該当する選択肢を3つまで選べることとした。
リアルタイムOSの問題点として最も多く選ばれたのは、前回までと同様に「使いこなせる技術者が不足またはいない」で、全体の約54%が問題点と指摘しており、約33%の回答者が最大の問題点であるとしている(いずれの比率も前回調査とほとんど一致している)。
それに次いで、「価格が高い」が約14%、「開発環境やツールが不足」と「OSにより仕様の違いが大きく切替えの負担が大きい」がいずれも10%弱、「OSのサイズや使用リソースが大きすぎる」「性能・機能が要求条件に適合しない」が7%台となっている。前回調査との比較では、「開発環境やツールが不足」の指摘が5%程度減少しており、開発環境やツールが充実してきていることがわかる。その分、「特に問題はない」とした回答者が増加している。
複数回答で見た場合も、単数回答とほぼ同様の傾向となっている。すなわち、前回調査では複数回答で「開発環境やツールが不足」が「価格が高い」を逆転していたのが、今回は2番目、3番めの問題として「開発環境やツールが不足」と挙げた回答者も減少している。
「その他」の自由記述には、OSに関する情報不足やリリース時期が不定であること、信頼性が低いことなど、多様な問題点が挙げられている。また、「開発環境やツールを不足」を挙げた回答者に対して、具体的にどのようなツールが不足しているかを具体的に記述してもらう項目に対しては、多くの回答者がデバッグ環境関連(デバッガやエミュレータ)を挙げている。
問題点 | 割合 | |
---|---|---|
単数回答 | 複数回答 | |
技術者が不足、またはいない | 32.6% | 54.4% |
価格が高い | 14.1% | 31.0% |
開発環境やツールが不足 | 9.6% | 25.4% |
OSにより仕様の違いが大きく、切り替えの負担が大きい | 9.5% | 21.5% |
OSのサイズや使用するリソースが大きすぎる | 7.7% | 20.9% |
性能や機能が要求を満たさない | 7.5% | 19.4% |
ソフトウェア部品が不足 | 5.2% | 18.0% |
ベンダサポートが不充分 | 1.5% | 8.2% |
その他 | 2.9% | 5.7% |
問題なし | 9.4% | 10.6% |
リアルタイムOSの選択基準に関しては、単数回答・複数回答とも、前回の調査とほとんど同様の結果となった。具体的には次の通り。
単数回答では、「性能・機能が要求条件に適合するから」という順当な回答が最も多く、約25%を占める。ただし、「自社内で使用実績があるから」「世の中で多く使われているから」という実績重視の選択基準がそれに続き、両者をあわせると約30%と、「性能・機能が要求条件に適合するから」を越える。さらに、「価格が安いから」「信頼性が高いから」が10%程度で続いている。
複数回答でみると、「価格が安いから」が単数回答と比べて比率が高く、30%を超えている。OSの価格は、最も重要な基準とは言えないが、2番目ないしは3番目の選択基準として重視されていることがわかる。また、「良い開発環境やツールがあるから」も、単数回答では約7%しかないのに対して、複数回答では約28%になる。
選択基準 | 割合 | |
---|---|---|
単数選択 | 複数選択 | |
性能や機能が要求に適応する | 24.6% | 41.0% |
自社内の実績 | 16.4% | 27.7% |
世の中で多く使われている | 13.9% | 29.3% |
信頼性が高い | 10.0% | 33.0% |
価格が安い | 12.1% | 24.3% |
OSサイズや使用リソース | 7.1% | 22.7% |
開発環境やツール | 6.6% | 27.7% |
対応チップの多さ | 3.3% | 13.5% |
ベンダサポートの良さ | 0.9% | 8.1% |
ソフトウェア部品の多さ | 2.1% | 9.2% |
その他 | 3.0% | 4.5% |
アンケート回答者のITRON仕様OSとの関わりを問う項目では、「ITRON仕様OSを使用/開発したことがある」「ITRON仕様OSを調査/検討したことがある」をあわせて75%近くになる一方で、「全然存在を知らなかった」とした回答者は約1.0%と、ITRON仕様OSの周知度が十分に高いことが確認できた。いずれも、前回調査とほぼ同様の結果となっている。
関わり | 割合 |
---|---|
ITRON仕様OSを使用/開発したことがある | 43.4% |
調査/検討したことはある | 31.9% |
話を聞いたことはある | 23.7% |
存在を知らなかった | 1.0% |
前の設問で、「ITRON仕様OSを使用/開発したことがある」または「ITRON仕様OSを調査/検討したことがある」とした回答者に対して、ITRON仕様OSの長所と短所を尋ねた。選択肢を提示し、該当する選択肢を3つまで選べることとした。
ITRON仕様OSの長所としては、「ソフトウェアの移植性がよい」を挙げた回答者の比率が、単数回答で約31%、複数回答で約44%と最多数を占めた。次いで、「仕様の理解が容易」を挙げた回答者が多く(単数回答において約20%、複数回答において約36%)、「価格が安い」「サイズ・使用リソースが小さい」「多種類のチップに対応している」の順で続く。いずれも、ITRON仕様OSの設計の狙いが成功していることを示している。単数回答と複数回答の傾向はおおよそ一致している。「その他」の自由記述には、仕様がオープンであることや使用実績、情報が多いことを挙げる回答が多かった。
最多数を占めた「ソフトウェアの移植性がよい」は、今回の調査ではじめて選択肢に挙げた項目である。従来、「多種類のチップに対応している」が移植性のよいことと重複する内容と考え、選択肢に挙げていなかったが、短所を問う項目との対称性から選択肢に挙げたところ、最多数を占める結果となった。その分、「多種類のチップに対応している」は、前回調査と比べて単数回答で約10%減少した。その他の選択肢も、「ソフトウェアの移植性がよい」に回答が流れた結果、「仕様の理解が容易」が約10%減少するなど、ほとんどの選択肢で比率が減少した。
長所たる特徴 | 割合 | |
---|---|---|
単数回答 | 複数回答 | |
ソフトウェアの移植性がよい | 30.8% | 43.7% |
仕様の理解が容易 | 20.0% | 35.8% |
OSのサイズおよび使用リソースが小さい | 11.8% | 28.1% |
多くのチップに対応している | 7.6% | 23.7% |
価格が安い | 14.5% | 28.5% |
性能が高い | 2.5% | 6.5% |
扱える技術者が多い | 2.1% | 7.9% |
機能が豊富 | 1.3% | 4.7% |
よい開発環境やツールがある | 1.9% | 4.7% |
ソフトウェア部品が充実している | 0.2% | 1.3% |
サポートがよい | 0.3% | 1.4% |
その他 | 3.0% | 4.4% |
目立った長所はない | 4.1% | 6.3% |
ITRON仕様OSの短所としては、「開発環境やツールが不足」を挙げた回答者が、単数回答で約19%、複数回答で約31%と最も多いが、前回までの調査と比べると徐々に減少する傾向にあり、ITRON仕様OSの開発環境やツールの整備が進んでいることがわかる。
それに次いで、「目立った短所はない」とした回答者が多く、単数回答で約14%となっている。さらに、「扱える技術者が少ない」「ソフトウェア部品が少ない」「実装依存部分が大きくソフトウェアの移植性が悪い」の順で続いている。前回調査との比較では、「目立った短所はない」がやや減少する一方で、「扱える技術者が少ない」が大きく増加しており、技術者不足が深刻であることがわかる。「実装依存部分が大きくソフトウェアの移植性が悪い」は、やや減少した。
複数回答では、「ソフトウェア部品が少ない」「サポートが悪い」が相対的に多くなっている。「その他」の自由記述についても、前回調査と同様、海外での実績の低さの指摘が複数あった。
長所たる特徴 | 割合 | |
---|---|---|
単数回答 | 複数回答 | |
開発環境やツールが不足 | 19.2% | 31.2% |
扱える技術者が少ない | 13.4% | 21.5% |
ソフトウェア部品が少ない | 12.1% | 24.0% |
ソフトウェアの移植性が悪い | 11.4% | 17.1% |
機能が不足 | 6.1% | 10.8% |
OSのサイズおよび使用リソースが大きい | 4.6% | 8.4% |
価格が高い | 2.9% | 5.7% |
サポートが悪い | 2.6% | 8.0% |
対応しているチップが少ない | 1.8% | 4.1% |
性能が低い | 1.7% | 2.8% |
その他 | 4.6% | 6.5% |
目立った短所はない | 14.3% | 15.4% |
すべてのアンケート回答者に対して、ITRON仕様や組込みシステムに関連する情報を、どのような手段で入手しているかを、選択肢を示して、該当するものすべてを選んでもらった。
回答結果は、「ITRONプロジェクトのホームページ」が約55%と他を引き離して最も多く、インターネットを通じた普及・広報活動の重要性を再認識させられる結果となった。その他では、「ITRONオープンセミナー」「その他の展示会・セミナー」「日系エレ関連の配信メール」「新聞・雑誌」「メーカ・代理店より」が10%を超えた。また、情報の入手先を1つも選択しなかった回答者も896人中146人いた。
なお、アンケートの質問では「ITRON仕様および組込みシステム関連情報」としたが、回答結果からは、ITRON仕様に関連する情報の入手先のみを選んでいる回答者が多かったものと予想される。
情報元 | 割合 |
---|---|
ITRONプロジェクトのホームページ | 55.5% |
その他のホームページ | 4.4% |
ITRONオープンセミナー | 14.6% |
その他の展示会・セミナー | 12.9% |
ITRONニュースレター | 8.1% |
ITRON Club メーリングリスト | 6.7% |
その他のメーリングリスト | 1.2% |
日系エレ関連の配信メール | 12.7% |
その他の配信メール | 1.1% |
雑誌・新聞 | 14.7% |
メーカ・代理店より | 12.2% |
その他 | 4.8% |
すべてのアンケート回答者に対して、ITRONプロジェクトが今後の取り組むべき課題の選択肢を提示し、該当する選択肢を3つまで選べることとした。
単数回答と複数回答での順位はいくつかの逆転を除いては一致しており、「ソフトウェア部品のインタフェースの標準化」「開発環境とのインタフェースの標準」「フリーのITRON仕様OS」「ネットワークサポート」が上位4項目である。
前回調査との比較では、全体的な順位は、ほぼ一致している。比率的には、上位2項目の「ソフトウェア部品のインタフェースの標準化」「開発環境とのインタフェースの標準」の比率が減少し、「フリーのITRON仕様OS」は単数回答のみでやや増加、「ネットワークサポート」の比率もやや増加している。
内容 | 割合 |
---|---|
複数回答 | |
ソフトウェア部品のインターフェースの標準化 | 42.6% |
開発環境とインターフェースの標準化 | 39.9% |
フリーのITRON仕様OS | 24.0% |
ネットワークサポート | 27.0% |
C++/Java言語バインディングの標準化 | 16.6% |
アプリケーション設計ガイドラインの作成 | 14.2% |
ハードリアルタイムサポート | 10.5% |
教育セミナーの実施 | 8.0% |
Java実行環境のサポート | 11.2% |
応用分野を絞った標準化 | 3.0% |
マルチプロセッササポート | 3.3% |
フォールトトレランスサポート | 2.4% |
その他 | 3.0% |
どれも期待しない | 1.1% |
今回の調査は、過去3回に実施した内容を基本的には踏襲しながらも、それに改良を加える形で実施した。収集できた回答数は前回の3割増しとなったが、アンケート内容の変更もあって、回答を得た組込みシステムの数は減少した。
全般的な傾向として、組込みシステムの大規模化の傾向が、これまでになく顕著にデータにあらわれた。具体的には、32ビットプロセッサを用いたシステムが増えたことや、プログラムサイズが64KB未満のシステムが減少したことが挙げられる。
また、4回の調査を通して、ITRON仕様OSの利用率は一貫して増加している。今回は、組込みシステム全体の中では約37%、OSを使用していないシステムを除くと実に約47%のシステムがITRON仕様OSを組み込んだという結果が得られた。 これらの結果からも、ITRON仕様が、他を大きく引き離して業界標準仕様の地位にあることがわかる。
全般的には、ITRONプロジェクトにとって喜ぶべき結果となっているが、ITRON仕様OSの短所については、減少傾向にはあるものの、前回調査と同様、開発環境やツールの不足を挙げた回答者が多かった。また、ITRON仕様OSを扱える技術者の不足を挙げた回答者が急増し、組込みシステム分野に経験を持った技術者が足りないという指摘をデータ的にも裏付けるものとなっている。今後、 ITRON仕様OSに関する教育テキストやカリキュラムなどの開発が重要になってくると考えている。
(社)トロン協会では、この結果をITRONプロジェクトの今後の活動方針に活かすとともに、来年度以降も同様の調査を継続して行っていきたいと考えている。