処理結果の正しさが、出力される結果値の正しさに加えて、結果を出す時刻にも依存するような処理をリアルタイム処理、そのような処理を行うコンピュータシステムをリアルタイムシステムと呼びます。別の言い方をすると、リアルタイムシステムには、正しい結果を出すことに加えて、適切な時刻に結果を出すことも求められています。典型的には、あるイベントが発生してから、ある時間(この時間をデッドラインと呼びます)以内に結果を出すことが求められます。
リアルタイムシステムのわかりやすい例として、自動車のブレーキを制御するコンピュータシステムを考えます。例えば、「99.99% はブレーキをかけてから 1秒以内に止まるが、残りの 0.01% は 10秒かかる自動車」と、「必ず2秒以内で止まる自動車」のどちらが優れているかは、説明するまでもないでしょう。
各種の機器に組み込まれてその制御を行うコンピュータシステムのことを、機器組込み制御システム、ないしは単に組込みシステム(embedded system)と呼びます。何を持って「組み込まれた」とするかは曖昧なところですが、コンピュータらしくない外観を持ったものと考えてよいでしょう(これでもまだ曖昧ですが)。
近年の半導体技術・マイクロプロセッサ技術の進歩によって、組込みシステムの応用分野は拡大の一途をたどっており、身の回りの電子機器・電気機器のほとんどに組込みシステムが使われています。組込みシステムの使われている機器の例を表に挙げます。
今後、ますます多くの機器に組込みシステムが使われるようになるとともに、制御対象となる機器の高機能化や複合化に伴って、組込みシステムも大規模化・複雑化していくものと思われます。また、機器のデジタル化の流れも、組込みシステムの重要性を増しています。さらに今後は、組込みシステムのネットワーク化が重要な課題となるでしょう。